「競争」「ものまね」「運だめし」「めまい」。遊びは必ず4つのうちのどれかに分類ができる。今から60年以上前に社会学者が提唱したものだが、大人気ゲーム「フォートナイト」はこの遊びの4要素全てを満たしている。また、「課金してもゲーム内で有利に働かない」という点は、世界中の子供たちを魅了する遊びの本質だ。

 全ての「遊び」は4つに分類することができる。社会学者ロジェ・カイヨワが1958年に発表した『遊びと人間』の中で紹介されているものだ(i)

 4つとは、「競争」「ものまね」「運だめし」「めまい」である。最後の「めまい」だけ分かりにくいが、例えばブランコに乗るような、純粋に刺激を楽しむような取り組みが相当する。本書の中では、この遊びのフレームワークがもう少し細かく説明されている。

 分類表の横軸はすでに紹介した遊びの4分類だ。縦軸は、秩序の度合いを意味している。上に行くほど秩序立っていない野放図な「遊戯」であり、下に行くほど秩序立った「競技」になっていく。例えば、「競争」で言えば、小学生男子が突発的に「角の電柱まで競争な!」「あっ、ずりぃ!」と始まるかけっこは秩序立っておらず、ルールに従って行われる野球の試合は秩序立っている。

 4分類に共通した「遊び」の特徴としては、「自分の意志に従った自由な活動であること」や「失敗の可能性や意外性がある未確定の活動」など、いくつかの項目が挙げられている。その中でも私が、「なるほど!」と膝を打ったのは「現実・日常から隔離された活動」という項目だ。これは、遊びが、社会的な地位や、保有資産といった日常とは無関係に行われるということだ。技量の習得などに資産や生まれが影響しそうだが、金持ちも貧乏人も、遊びの前では平等である、というのは分かりやすい。

 と、以上のような話をお客さんとしていたところ、彼はちょっと思案した後に「フォートナイトが良くできているわけだなあ」と得心をしていた。言われてみるとフォートナイトの中には、4つの要素がいずれも含まれている。

 フォートナイトは、全世界で3億5千万人が遊ぶオンラインゲームだ(ii)。国内でも子供から大人まで多くの人をとりこにしている。スマホはもちろん、Nintendo Switch、プレイステーションなど、さまざまなプラットフォーム上で遊ぶことができる。基本利用料は無料なので、遊び始める障壁は低い。新型コロナウイルスの感染が拡大しつつあった2020年4月には、ゲーム内でのバーチャルライブに2700万人が参加したことが話題になった(iii)

単なるゲームとしてだけではなく、ゲーム内でライブが行われるなどインフラとしての役割も果たしつつある(画像提供/Shutterstock)
単なるゲームとしてだけではなく、ゲーム内でライブが行われるなどインフラとしての役割も果たしつつある(画像提供/Shutterstock)

「課金しても強くなれない」のがポイント

 遊びの4要素に照らして見てみよう。ゲームの基本は100人のプレーヤーによる勝ち残り戦。徐々に狭まるフィールドの中で、最後の一人の生き残りとなることを目指して戦う。これは「競争」だ。また、生き残れるかどうかは、スキルだけではなく、ゲーム序盤で良い武器を拾うことができるかどうかという「運だめし」の要素も強い。「めまい」はなんだろうか。ゲームが開始するとプレーヤーは飛行艇から飛び降りてフィールドの思い思いのところに散らばるが、この落下はある意味「めまい」だ。

 「ものまね」はどうだろう。フォートナイトでは、ゲーム内で支払いをすると自分が操作するプレーヤーをおしゃれにすることができる。アベンジャーズでおなじみのマーベルと提携しており、映画のヒーローの格好をさせたり、エモートと呼ばれるダンスや決めポーズを取らせたりすることもできる。これは「ものまね」だ。

 フォートナイトは、課金をすれば「おしゃれ」にはなれるが、強い武器を買ったり、プレーヤーの能力を高めるなど、勝つための能力向上はできない。これは「遊びは現実・日常から隔離された活動」そのものだ。本気の課金おじさんがいつも勝っていたら、小学生をこれだけ夢中にさせることはなかっただろう。

 もちろん、3億5千万人のユーザーを引き寄せ、飽きさせない工夫が、遊びの4要素だけで説明できるわけもないが、60年前のフレームワークが足元で最も人気のあるゲームと適合しているというのは面白い。

 遊びのフレームワークを、ゲームに当てはめるというのは素直な話だが、ゲーム以外のさまざまな商売に当てはめて、「あの商売にはどんな遊びの要素があるのかな?」と考えることも目線を変えるヒントになる。例えばTikTokは「ものまね」そのものであるし、メルカリは「今日どんな出物が流れてくるのか分からない」という「運だめし」の要素が強くあるようにも見える。

(出典)
(i)『遊びと人間』ロジェ・カイヨワ、講談社学術文庫(1990年、原著は1958年)
(ii)「ソニー、ゲーム『フォートナイト』開発社に270億円出資」日本経済新聞(2020年7月)
(iii) 「『フォートナイト』でのバーチャルライブ、累計参加者2700万人超す」井文、MoguLive(2020年4月)