顧客のリテンションのために次の手を打つWOWOW。分析結果から最適なスキンケアを提案するポーラ。両社に共通するのは、人間とAI(人工知能)がお互いの得意分野を生かし、協調してユーザーにメリットを提供することで囲い込みに成功しているという点だ。この「ケンタウルス・モデル」が勝ちパターンの一つになりつつある。

 有料放送サービスのWOWOWの契約をしていた人が、解約するためにコールセンターに電話をかけた。解約理由を問われたため「テニスの王子様ミュージカル(テニミュ)の特集が終わったから」と答えたところ、「テニスの王子様に出演されていた松岡広大さんが主演のNARUTOの舞台が10月に放送されるのですが、松岡さんのファンではございませんか?」と尋ねられたという。

 これはWOWOWの番組データベースを活用したリテンション施策(解約防止施策)だ。一見するとネットに流布するうわさ話に聞こえるが、この施策を主導した元WOWOWコミュニケーションズ取締役の大坂祐希枝氏が、著書『売上の8割を占める優良顧客を逃さない方法』の中で、実話であると明らかにしている(i)

 大坂氏は同著の中で、「人が、人や企業にロイヤルティーを感じる際の重要なポイントは『自分のことを分かってくれる』だと言われています」と説明している。そして、その「分かってくれる感」をシステムとスタッフの協調によって実現した結果、冒頭に示したテニミュにまつわるやりとりに至っている。

 この裏にある仕組みが透けて見える事例も紹介されている。東映の時代劇「赤穂浪士」がきっかけで加入した60代男性が解約を申し出た。邦画時代劇の放送予定はなかったため、電話応対をしているコミュニケーターはシステムの指示に従って「どんな気分や雰囲気の番組がお好きですか?」と質問。「男気あふれるやつが好き」という返答をシステムに打ち込んだところ「来月の『ロッキー』再放送をお薦めせよ」と案内され、そのようにしたところリテンションに成功した。顧客の反応は「君は若いのによく分かってるね」だったという。

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