「世界最高のサッカー選手はどちらか?」という投票を促す吸い殻入れ、男性用トイレにある「的」のシール……。これらは自然な目的達成も促すが、そこには「目的の二重性」がある。会社でも、複数の課題を同時に解決する仕掛け・アイデアがないか考えてみるとよいだろう。
道端に据えられた看板らしきものには、現代サッカー界の2大スター、リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドの名前が書かれている。看板上部には「どちらが世界で最高の選手?」と書かれ、それぞれの名前の下には直径1センチメートルにも満たない小さな穴が開けられている。穴の下には透明なケースがあり、たばこの吸い殻がたまっている。ロナウドに投じられた吸い殻のほうが多い。
これはたばこのポイ捨てを防止するために設置された、ちょっと変わった吸い殻入れだ。たばこを捨てようとした人がこの吸い殻入れを目にすると、「おいおい、そんなのメッシに決まってるだろう」と、吸い殻をメッシ側の穴に入れる。喫煙者はメッシを応援するという崇高な使命を果たし、自治体は街の美観を守ることができる。放任でも、ポイントの付与でも、罰金でもなく、行動をいざなっている。
このような取り組みを「仕掛け」と呼ぶのが「仕掛学」を提唱する大阪大学の松村真宏教授だ(i)。松村教授は仕掛けの類例として、「男性用トイレにある小便器の的」も挙げる。利用者はついついゲーム感覚で便器の的に向けて用を足し、結果として便器の周りを汚すことがない。設置者としては清掃の負担が減る。
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