起業家教育のなかで使われる概念の一つに「手中の鳥の原則」というものがある。企業でこの原則を貫いているように見えるのが、コンビニATM事業最大手のセブン銀行だ。いくつかの所与の手段を用いて、新しい目的を達成していくその姿勢から、私たちが学べることは多い。

 いまやすっかり当たり前のものになったコンビニATMだが、最大手であるセブン銀行から学ぶべきことは多い。

 セブン銀行が設置しているATMの数は約2万5000台、年間利用回数は8億4900万回だ。それにより1365億円の収益を得ている。セブン銀行の経常収益は1486億円であるため、収益全体の92%がATM利用料に由来する(i)

 そもそも一般的な銀行の主たる収益源は融資。顧客から預かった金を企業などに貸し出し、その利子によって利益を得ることが一般的だ。極端に言えば、「ATMは預金を集める上でのエサのようなもので、コストセンターにすぎない」というのがセブン銀行が登場する以前の、ほとんどの銀行の本音だろう。それが収益の柱になっているのだからすごい。

2001年設立のセブン銀行は、私たちの生活に欠かせないインフラになった(写真提供/shutterstock)
2001年設立のセブン銀行は、私たちの生活に欠かせないインフラになった(写真提供/shutterstock)

 その実現には、もちろんコンビニ店舗が大きな役割を果たした。セブン銀行が設立された時点でのセブン-イレブン店舗数は約9000(2020年現在は約2万1000)(ii)。そこに行けばATMが使えるというのは、顧客にとっては利便性が高まるので当然うれしい。

 当初、設置される側の店舗のオーナーは「銀行なんかにかかわりたくない」と腰が引けていたが、結果的には集客にもつながるため歓迎されるようになった(iii)。いまでこそどのコンビニにもATMが設置されているが、設置した当時、「お金もおろせるコンビニ」というのは、すぐ隣の別のコンビニでなく、信号を渡った向こう側にあるセブン-イレブンにわざわざ行く理由となっただろう。

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