会社が果たすべき社会的役割が今、改めて問われている。ホンダはそれをプロジェクト検討の際に「A00」という番号で示し、自社が社会で果たすべき役割を問いかけている。トップ自らが旗を振るのがSOMPOホールディングスグループ。保険会社からの脱却を果たすための本気のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。

 ホンダの「A00」をご存じだろうか。

 これはホンダ社内でプロジェクトを検討する際に用いられる項目であり、「A00」という番号からも分かるように企画書の冒頭に記載される。A00に記載されるのは、企画の大義だ。社会・人類のために、なぜこの企画を実施すべきであるのかをA00として示す。

ホンダは「本質的な目標」「ありたい姿」「夢」を「A00」という言葉に込める(写真提供/shutterstock)
ホンダは「本質的な目標」「ありたい姿」「夢」を「A00」という言葉に込める(写真提供/shutterstock)

 例えば、「とても静かでスムーズで、シフトチェンジのショックがまったく感じられないようなエンジン」はA00であるが、「バルブの開閉がスムーズなエンジン」はA00ではない。後者は手段の1つにすぎないからだ。同様に、「シェアナンバーワン」とか「売上高○○円」とかはA00ではない。収益を上げることは手段であり、真の目的ではないからだ。A00は「本質的な目標」「ありたい姿」「夢」でなければならない。「世界一」とか「コスト半減」といった項目は、A00に次ぐ、「A0:高い目標」として記載される(i)。A00では一般論や手段の記述に陥ることなく、優先順位を一言で説明することが求められている。

 大昔の逸話ではあるが、本田技術研究所の社内でクリスマスパーティーが催されることになった際、幹事が「今年のパーティーのA00は何か」と問われた。「1年の垢(あか)を落として、来年に向けて英気を養うこと」と答えたところ「そんな毎年使い回しできるようなものではだめだ。お前はA00も満足に言えないのか」と説教されたという(ii)

 ホンダの企画書にA00があるように、すべての会社にもA00、すなわち「我が社が社会で果たすべき役割」がなくてはならない。会社は自然にできるものではない。複数の人間が何かの目的のもと集まってできる。今、大企業に限らず「我が社の社会的役割は何なのか?」という問いを突きつけられている事業者が増えている。これまでの数十年は祖業の拡大だけで成長できた事業者が、市場の成熟やデジタル活用による新たな敵との戦いを迫られているからだ。

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