コロナ禍の今、全米で最も注目されている企業の1つが、2012年からオンラインフィットネスを展開していた「ペロトン」だ。だが好調の理由は新型コロナによる“追い風”だけではない。徹底した顧客とのタッチポイントの強化で、ユーザーを引き付けている。そのマーケティングの普遍性は宗教さながらだ。
自らを「テクノロジーと、フィットネスと、メディアと、デザインと、ソフトウエアと、小売りと、製品と、アパレルと、顧客体験と、物流の会社」と呼ぶ企業がある(i)。米国でオンライン型のフィットネスサービスを提供する「ペロトン」だ。
既存のフィットネス業界に破壊的な変化をもたらすことを目的に、2012年に創業した。19年には上場。現在は新型コロナウイルスの感染拡大で従来型のフィットネスクラブが苦戦する中、在宅を余儀なくされている人たちを引き寄せて会員数・業績を大きく伸ばしている。20年1~3月期の売り上げは前年同期比の66%増だ(ii)。
ペロトンの収益は2本の柱からなる。2245ドルで販売されるネットワーク接続フィットネスバイクをはじめとした高額なデバイスの販売と、月々39ドルのサブスクリプション契約である。20年5月時点での会員数は260万人、そのうち89万人がサブスクリプション契約を結んでいる。同社の2020年第1から第3四半期の収益は約12億ドル。そのうち8割がハードウエア、2割がサブスクリプション収入となっている(iii)。
それを支えるのが極めて高いロイヤルティーだ。月次の離脱率はわずか0.46%。ネットプロモータースコア(NPS、顧客推奨度)は91と、テスラについで全米第2位(iv)。その結果、20年現在の購入者のうち49%は友達あるいは家族からのクチコミによって購入している。17年時点でのクチコミ率は23%というから、その伸び率は大きい。
ペロトンは「フィットネスを通じて人々の生活を豊かにする」ために、楽しくて、達成可能で、効果的で、便利なサービス提供を行うとしている。具体的にはどのような価値を提供しているのか。
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