ダイナミックプライシングで「雨の日に傘を高く売る」ようなことは、顧客に嫌がられる。足元を見ているように思われるからだろう。では、「足元を見る」の逆は何だろう。ここでは「寄り添う」であると考える。「寄り添い」の実装事例を、販促やインターフェースの研究事例の中から紹介したい。

 2018年、ブラジルの首都サンパウロの国際空港に変わった自動販売機が置かれていた(i)。この自動販売機のスキャナーに遅延している飛行機のチケットを読み込ませると、キットカットが無料で出てくる。イライラしている客にキットカットの差し入れを行うという趣旨だ。プロモーション用とはいえ、イライラしている状況を特定しその人たちに寄り添おうとする様子が見て取れる。

自社の商品・サービスは、しっかりと顧客に寄り添えているか? 常に自問することが大切だ(写真はイメージ)
自社の商品・サービスは、しっかりと顧客に寄り添えているか? 常に自問することが大切だ(写真はイメージ)

 ユーザーインターフェースの研究としてつくられた「キャストオーブン(Cast Oven)」は一見すると普通の電子レンジのように見える(ii)。しかし、一般的なレンジのように正面が窓ではなく、ディスプレーになっている。キャストオーブンは、ユーザーが温め時間を設定し、調理を開始すると、その時間の長さに合わせた動画をYouTubeから探し、電子レンジ前面のディスプレーで再生する。温め終了と同時に動画も終了する仕組みだ。慌ただしい家事の中ではそぐわないかもしれないが、深夜のオフィスの夜食シーンなどには適するのではないだろうか。

 アナログな事例だが、似たような取り組みとして、美大生がつくった「ティーブック(TEA BOOK)」がある(iii)。ティー「バッグ」ではなくて「ブック」だ。ティーバッグの包装紙に短編小説が印刷されており、お湯を注いでから小説を読むと、読み終わった頃にはちょうど良い塩梅(あんばい)にお茶が蒸されている。キャストオーブンもティーブックも、見せたい動画や読ませたい小説を押し付けると言うよりは、その人に許されている時間にそっと入り込んでいる感じがよい。遊んでいる時間をうまく見いだして、そこに寄り添っているような感じがする。

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