緊急事態宣言の49日間、人の流れはどのように変化していったのか。世代別の傾向はあったのか。ドコモ・インサイトマーケティングが提供するモバイル空間統計を用いて、人流がどのくらい減ったのかを観測した。リモートワークの発達で「オフィス不要論」も叫ばれるが、人との雑談・相談を代替することはできるのだろうか。
人々がここまで明確に「県境」を意識したこともなかったのではないだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大で日々の暮らしは激変。地方自治体は、「都市部との交流人口を増やし、人口減少を補う」というこれまでの方策をいったん取りやめ、ともかく来県しないでほしいという強いメッセージを出し続けた。「3密の回避」は、「人の集積度を高めることで経済の効率を高める」という長く続いた考え方の見直しを意味している。
49日間続いた緊急事態宣言が、5月25日をもってすべて解除されたことで一つの節目を迎えた。感染の拡大を防ぐために移動の自粛が呼びかけられたが、その実態はどうだったのか。
図1は、2020年1月8日から5月25日まで、毎日13時台において都外を訪れた東京都民の数の推移を、1月8日を100として示している。利用したデータはドコモ・インサイトマーケティングが提供するモバイル空間統計である。モバイル空間統計はNTTドコモの携帯電話ネットワークから得た人口動態データだ。あるエリアにおける1時間ごとの人数など、24時間・365日、様々な時点での人口動態を把握できる。主たる出来事と照らしながら見てみよう。
、3月2日の臨時休校要請前後より都外訪問者数は減少するも、桜の開花など春の訪れもあってか徐々に都外訪問者数は増加。後に「気の緩み」とされた3月22日からの3連休には都外訪問者数が132万人に達した。
モードが大きく変わったのは、3月24日の東京五輪延期決定、25日の志村けんさん入院報道の頃からだ。4月7日に非常事態宣言が出されるとテレワークの推進や、県外からの来客の謝絶など、企業による取り組みも大きく進んだ。1月後半(1月17日からの2週間)における都外訪問者平均は約108万人であるが、非常事態宣言期間後半(5月10日からの2週間)では約68万人と4割近く減少している。遠出することに対しての自粛がうかがわれる。
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