養豚業界では子豚と他の物を見分けるAI(人工知能)が開発されている。ITを取り入れることでの経済的効用は大きいという。逆にアナログ的な発想で、AIを導入するよりも低コストで問題解決できる例もある。「変えられないもの」と「変えられるもの」を的確に区別することは、デジタル変革においてはとても重要だ。

養豚業界で、子豚の事故を防ぐAIが注目されているという。その方法とは?
養豚業界で、子豚の事故を防ぐAIが注目されているという。その方法とは?

 人工知能の活用が広範かつ急速に進んでいる。その先鋭事例を調べる中で、「今、自家AIを考える」という特集を組んでいる雑誌があったため、すぐに購入した。

 使い勝手が良くなったAIの活用を、システムインテグレーター任せにするのではなく、ユーザーが自らソフトウエアを内製。それによってAI活用を、地に足のついた形で高速で改善し続けることができる。このようなプロセスはデジタル変革の極めて重要なテーマだ。「自家AI」という呼び名は初めて聞いたが、上のような内製の動きを示す良い呼び名だな、と感じたためだ。

 ところが蓋を開けると完全に私の早合点だった。購入した雑誌は「月刊養豚界」だったのだが、養豚業界でAIといえば「人工授精(Artificial Insemination)」のことで、Artificial Intelligenceとは全く関係ない特集であった。救われたのは、同誌の別のコーナーで人工知能のほうのAIも取り上げられていたことだ。新生子豚の事故減少を目的としたデンマークのスタートアップ「ポルコビジョン」についてであった(i)。新生子豚にまつわる事故は多く、その事故率が半分になれば、農家にとっての経済的効用は大きい。デジタル活用に投資をしても1年半から2年で回収できるという。

「月刊養豚界」の巻頭特集が「今、自家AIを考える」。養豚業界に携わる人にとっては、実は「AI=人工授精」だ
「月刊養豚界」の巻頭特集が「今、自家AIを考える」。養豚業界に携わる人にとっては、実は「AI=人工授精」だ

 ポルコビジョンが提供するソリューションは「カメラや赤外線センサーで豚舎の状態を監視し、異常があれば人間が対応する」というものだが、注目したいのはそこで取り上げられている「AI実装に至るまでの課題」の生々しさだ。例えば、温度センサーのみに依存していると、生まれたての子豚と母豚のふんを区別することができない。だからといって光学カメラで認識しようとすれば、子豚と母豚の足を見間違えてしまう。そこをどのように解決していくのか、というのが同社の腕の見せどころであったという。

養豚大国デンマークならではのスタートアップ「ポルコビジョン」
養豚大国デンマークならではのスタートアップ「ポルコビジョン」
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