応援したい人に思いを伝える方法はさまざまある。ただSNSで「いいね!」するだけでは物足りないし、かといっていきなり現金を送り付けるわけにもいかない。そんなニーズに応えた、「応援する気持ちを金に変換する仕組みの提供」を目指しているサービスがある。
応援する気持ちをお金に変換する、分かりやすい例が物販だ。矢沢永吉のタオルを購入する人は、自宅のバスタオルが不足しているから買っているわけではない。コンサート会場で売っているグッズを買うという行為は、ファンとしては応援の気持ちの表れだ。「物を買う」ことは投げ銭と異なり、日常生活の中で慣れ親しんでいる金の使い方であるため、ファンとしても金を使いやすいのだろう。ももいろクローバーZの熱烈なファンで、都内IT大手企業勤務の筆者の知人は、「応援しているグループのグッズを買うということは、ファンにとってはお布施であり感謝や愛情を表現する行為なので、お金には糸目をつけない」と熱く語っていた。
そのような仕組みをスーパースター以外にも使いやすくしているのが、2011年に創業した米国のTeespring(ティースプリング)だ(i)。ティースプリングは一見するとオーダーメードTシャツ店であるが、「応援する気持ちを金に変換する仕組みの提供」を目指している。
例えば、あるクリエイターが自分がデザインしたTシャツを売りたいとしよう。普通のオーダーメードTシャツ店に100枚発注した場合は、そのクリエイターが100枚分のコストを負い、Tシャツを発送しなければならない。もちろん売れ残った場合、在庫を抱える可能性もある。
ところがティースプリングであれば、これらのリスクを負う必要がない。クリエイターは、まずティースプリング上でTシャツをデザイン。SNS上でつながりのある多くのファンに対して、その告知を行う。購入希望者が一定数を超えると生産・発送され、そのクリエイターに対しては所定の金額が支払われる。Tシャツであれば1枚24ドルで販売されるうち、10ドルが商品の製造・配送およびティースプリング社向けの手数料として徴収され、残りの14ドルがクリエイターに入る仕組みになっている。
他にもiPhoneケースなどのデザインや販売もでき、20ドルのケース販売ならばクリエイターに入るのは12ドルだ。コストは変動せず、1枚売れたらいくら入るのか分かりやすい形態になっている。購入型クラウドファンディングという形で、人のつながりという社会資本を金融資本に変換しているといってもよいだろう。
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