「我が社の製品・サービスを愛好するばかりではなく、会社自体にまで愛着を持ち、応援してくれる」。こんなファンを増やしたいのはマーケティング部門だけではない。IR部門は同じ観点で個人投資家を増やしたいと考えている。マーケティングとIRの接点となる「ファン株主」の重要性は今後高まっていくはずだ。

顧客をファンから株主にできれば、関係性はさらに強固なものになる(写真/Shutterstock)
顧客をファンから株主にできれば、関係性はさらに強固なものになる(写真/Shutterstock)

 水色の缶が特徴的な、「パンクIPA」というおいしいビールがある。スコットランドで2007年に創業した、ブリュードッグが販売するクラフトビールだ。ブリュードッグは派手なプロモーションでも知られているが、資金集めについても面白い取り組みをしている。その名も「パンク株」だ。パンク株を通して、ブリュードッグ製ビールのファン3万人から20億円の資金を調達した。投資家はブリュードッグのオンライン店舗や直営のバーでの割引、新製品や限定製品の先行独占販売、年次総会への招待などの特典を受けられる。

パッケージも、犬を模したシンボルマークがかわいく、洗練されている
パッケージも、犬を模したシンボルマークがかわいく、洗練されている

 ブリュードッグの創業者ジェームズ・ワットは、その著書『ビジネス・フォー・パンクス』の中でパンク株の効用を次のように説いている(i)。「『パンク株』のモデルが持つ本当の素晴らしさは、金ではない。このモデルに、ブリュードッグと、ブリュードッグのビールを楽しむ人たちを結束させる力があるということだ。ただ出資が集まったのではなく、信頼できる献身的なブランド・アンバサダー、言い換えればクラフトビールの伝道師集団が僕らの元に結成されたのだ」。

カゴメの株主の同社製品購入額は一般消費者の「10倍」

 ブリュードッグが言う「パンク株」を一般化すると、「ファン株主」と呼ぶことができる。自社の製品・サービスを愛好してくれるファンを株主にする、という施策だ。ファン株主への注力として、国内ではカゴメの事例がよく知られている(ii)。カゴメの個人投資家数は約19万人。発行済み株式総数の54%を個人投資家が保有している。2000年ごろから個人投資家の増大を目指し、2005年には個人投資家が10万人を突破した。ファン株主による同社製品購入額は一般消費者のそれの、何と約10倍だ。

ファン株主への情報が充実するカゴメのIRページ
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