定額制で、ものやサービスを消費者に届ける「サブスクリプション」ビジネスは、大きく分けて2つのタイプがある。「束ねるサブスク」と「ばらすサブスク」だ。これは、顧客が意思決定をする頻度がどう変わるのか、といった観点で整理できる。
購入頻度が高い商品・サービスについて、これまで購入していた間隔よりも長い契約期間で契約を結ぶサブスクの場合、それは「束ねるサブスク」になる。これまで小ロットで購入していたものを大ロットの契約に変えるわけで、購入の意思決定を束ねるからだ。結果として、買うという意思決定をする頻度が減る。例えば、月額課金で牛乳を自宅に届けてくれるサブスクなら、これまで3日に1度スーパーで適当な銘柄を選んでいた人が月単位で継続の可否を判断する。
一方、購入頻度が低い商品を提供するタイプが、「ばらすサブスク」だ。1度買ったら数年にわたり使い続けるのが当たり前だった商品を、数カ月で利用をやめたり商品の種類を変えたりできるようになる。例えば、7年に1度自動車を買い替えていた人が、月決め契約を結ぶサービスがこれに該当する。まとめて支払うかローン払いする必要があった自動車を、サブスクでばら売りしてもらえるようなイメージだ。
Netflixは何を醸成しているのか
では、2種類のサブスクは消費者心理にどのような変化をもたらしているのだろうか。
今回は、まず束ねるサブスクについて見てみたい。本来、顧客が有する商品の選択権を、束ねるサブスクではサブスク事業者に託することになる。相性が良い商材として第1に挙げられるのは、顧客にとって必要であるが、細部にはこだわりのない商品だろう。事業者の言う通りにしておけば間違いないからだ。例えば、ワイシャツとネクタイのセットが定期的に届くサブスクが該当する。実際にこうしたサービスが国内で提供されている。
映像配信の「Netflix」も、これまではその都度借りるかどうか判断していたビデオレンタルサービスを束ねてくれるサブスクだ。ワイシャツのような必要品ではなく嗜好性のあるエンタメサービスにおいて、それぞれのユーザーに対して作品をリコメンドする精度を高める。その結果、「言う通りにしておけば間違いない」という空気感をうまく醸成している。
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