顧客と事業者の関係が長期・継続的になり、事業者が「正直」であることへの要請が高まっている。この傾向の背景にあるのは、テクノロジーの活用による新しい機能やビジネスモデルの登場だ。今回はAI(人工知能)が及ぼす影響を考えたい。

(写真/Shutterstock)
(写真/Shutterstock)

 AI(人工知能)を活用したチャットボットが、様々な産業で広く用いられるようになっている。顧客が何を望んでいるのかを把握し、それに対して適切な答えを返す。このような手続きは、テクノロジーの進化によって安価に実現できるようになっている。

 しかし何をもって「適切」と考えるか。それは事業者によって異なる。もちろん、営利企業である以上、最終的に自社の利益につながらなければならないが、自社の利益だけが透けて見えるようなコミュニケーションを行っても、良い効果は得られないだろう。

ホテル向けチャットボットが生まれた理由

 AIを活用する中で、どのようなコミュニケーションが望ましいのか。そのヒントになりそうな事例が、ホテル向けチャットボットサービスの「tripla(トリプラ)」だ。トリプラは、ホテルの自社サイトに「質問のある方はこちら」といったリンクを用意し、そこをクリックすると質問ができ、回答を得られるサービスである(i)

 トリプラが生まれたきっかけとなったのが、ホテルに対する宿泊客などからの問い合わせの多さだ。例えば、都内にある「ホテルグレイスリー新宿」では、毎月2000通以上の問い合わせがあり、すべて従業員が応答しているという。一方、同じく都内にある「京王プラザホテル」は、宿泊者の約75%が訪日外国人観光客であり、多言語での問い合わせも多い。

 このような課題を踏まえて、開発されたのがチャットボットだった。AIを用いて多言語による問い合わせに回答できるため、ホテル側は応答にかかるコストを下げることができる。

 ホテルにとってチャットボットの導入目的は、顧客からの問い合わせコストの削減にとどまらない。旅行予約サイト(オンライン・トラベル・エージェンシー、OTA)経由で行われる宿泊予約を、自社サイト経由に取り戻すというメリットも期待できる。