コンピューターの役割は何かと問われれば、もともとの役割はその名のごとくコンピューティング、すなわち「計算」であった。銀行における金利計算や小売店における販売管理、投資信託の時価算出など、人間が行っていた計算を高価なコンピューターに代替させる取り組みは1980年代に大きく進んだ。

コンピューターによって人間の目や耳を代替できるようになった今、認知・判断の仕組みを、障害者向けに活用する取り組みが進んでいる(写真/Shutterstock)
コンピューターによって人間の目や耳を代替できるようになった今、認知・判断の仕組みを、障害者向けに活用する取り組みが進んでいる(写真/Shutterstock)

 現在注目が集まるAI(人工知能)の役割とは、一体なんだろうか。これまでの単純な計算や自動化と大きく異なるのは、人間でなければできないと考えられていた認知や判断をコンピューターに代行させられることである。つまり、人間の目や耳を代替できるようになる。

 例えば、スマートフォンのアルバム機能は既にAIによって「鈴木良介さんが写っている画像」を自動的に分類してくれるようになった。またスマートスピーカーは、ユーザーが何を話しているのかを理解し、「ジャズの楽曲をかける」といったリクエスト対応をしてくれる。人間の視覚や聴覚、そして認知・判断を代行しているわけだ。

 このような認知・判断の仕組みを、障害者向けに活用する取り組みが進んでいることをご存じだろうか。視覚や聴覚を失ってしまった人のために、機能をソフトウエアで補完しようとする取り組みだ。

家の中の音を“見える化”するアイデア

 米ワビオ(Wavio)が提供する「See Sound」はその1つ。火災報知機の警告音や子どもの泣き声、ガラスが割れた音、水道の蛇口から水が流れ続ける音、あるいは来訪者を知らせるチャイムといった家の中の様々な音を聴覚障害者向けに可視化するプロダクトである(i)。危険や変化を音で伝えるアイデアはたくさんあるが、聴覚障害者は音を聞くことができない。See Soundはこの課題を解決する。

 利用方法は簡単で、音を収集する専用装置を家の各所にある電源コンセントに差し込むだけでよい。異常を示す音を検知すると「玄関で赤ちゃんが泣いているようですよ」などと通知がスマートフォンに届く。現在75種類の音を対象としている。動画配信サービス「YouTube」のデータを基に、機械学習を使って自動判別するのが特徴だ。例えば赤ちゃんの泣き声は、子どもが泣き叫ぶ声のパターンをYouTube動画の中から数千人分を特定し、それを元データにして声を判別する機能を開発した。

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