「お前が受けるサービスの質は、お前の態度と俺の気分次第だ」。これはあるスコットランドのパブに掲示されているという張り紙の文言だ。これこそ「お客様第一」が過剰に横行し、みんなが疲弊している今の日本に足りていない考え方ではないだろうか。

「お客様第一」で疲弊する日本のサービス業。フランスのあるカフェでは、顧客ごとに対応を変えるあるサービスを提供し、この問題を解消したというが…(写真/Shutterstock)
「お客様第一」で疲弊する日本のサービス業。フランスのあるカフェでは、顧客ごとに対応を変えるあるサービスを提供し、この問題を解消したというが…(写真/Shutterstock)

 神のように扱われる顧客も、時と場所が変わればサービスの提供者だ。「お客様は神様です」というフレーズによる疲弊から脱却し、みんなで幸せになれないものだろうか。

 疲弊から脱却するために、顧客はどのような貢献ができるか。例えば、フランス・ニースのラ・プティット・シラーというカフェは、顧客の態度でコーヒーの値段が変わる。「コーヒー1杯」と注文すれば7ユーロ(約822円)であるが、「こんにちは。コーヒーを1杯いただけますか」と丁寧に注文すれば1.4ユーロ(約164円)となる(i)。店主が冗談で始めた告知で高い価格も強制ではなかったが、昼時の不愉快な顧客対策として利用者から支持された。

 このような話に強く反応したのが、大学生だ。筆者が学部1年生・2年生向けの講義の中でこの事例を紹介したところ、同意する学生が多かった。同意する背景には、彼らがコンビニエンスストアや飲食店、宿泊施設などで顧客の矢面に立つアルバイトをしている事情がある。「感情労働」の最前線にいるわけだ。「あまりにもひどい態度の客がいる」「嫌な客が来ない職場であれば多少時給が安くてもかまわない」といった意見もあった。

 ラ・プティット・シラーのようなケースは特殊かもしれないが、学生のコメントは痛切だ。礼儀正しく機嫌の良い顧客の“店内濃度”が高まれば、労働環境の改善に資する。人手不足が進む今の日本においては、労働力の確保という観点からも従業員の感情的な負荷を下げる取り組みは必要性が高まるだろう。

テクノロジーが具現化する「客の定量化」

 「金払いの良い客」とは異なり、「機嫌の良い客」や「態度の悪い客」を定量化することは容易ではなかった。ただここに来て、新しいテクノロジーによって実現しつつある。

 例えば、画像や映像データに基づいて「表情」を、音声データに基づいて「話し方」を分析し、その人が今どのような感情にあり、どのような精神状態にあるのか特定する技術が出てきている。

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