「ニーズがあるのは分かるんだけど、スケールしないよね」。大企業の新規事業担当者が一度は耳にするであろう、社内ご意見番からのコメントだ。大抵その後に続くのは、「我が社のあのヒット事業の売り上げの数パーセントしか見込めないんじゃ、なんだかやる気が出ないなあ」という発言だ。
関心のある事業規模は会社ごとに違うし、小ネタばかりに取り組んでも管理コストが高く付くことを危惧する気持ちは分かる。だが、普段「顧客目線」「顧客のペイン解消が我が社の使命」を説いていたご意見番が、気軽に「スケールしないからなあ」という。「そのスケールって誰のためなんだっけ?」と、筆者は違和感を覚える。
スケールした事業から撤退を余儀なくされたものの、再度局地戦で深みのあるビジネスに挑むのがカシオ計算機だ。カシオは2019年5月、19万9000円(税別)のコンパクトデジタルカメラ「DZ-D100」を発売した。皮膚科医向けに特化したデジタルカメラであり、皮膚科医の診療の支援にとことんこだわっている(i)。
皮膚科医は皮膚の病変部をカメラで撮影するが、接写に特化した専用レンズを用いるのが一般的。患部の周辺を撮影する際にはレンズを取り替えたり、別のカメラを使い分けたりしている。専用のレンズを外付けすると総重量が1キログラムを超えることもあり、取り回しに難儀しているという。
DZ-D100は約400グラムで、接写と患部周辺撮影のいずれにも対応しており取り回しがしやすい。さらに、光の反射を抑える撮影モードや、病変部をはっきり撮影するための機能を備える。記録したい患部をありのままに撮影することを目的に、照射ライトからレンズ、撮像画素までを最適に組み合わせている。
デザインにも工夫がある(ii)。普通のカメラは左手で押さえつつ、右手で把持してシャッターを押す使い方をする。一方皮膚科医の診療では、病変部を上からのぞき込むように撮影することが多いため、左手で把持した上で液晶画面をタップして撮影することが多い。DZ-D100はそのような使い方になじむデザインを採用したのだ。
付加的な機能として、撮影した病変部の実寸が簡単に確認できるメジャー機能や、患者ごとの写真を無線LAN経由で自動的に振り分けて管理する仕組みを用意している。画像管理のためのソフトウエアでは患部の経時変化を比較できるなど、皮膚科医がよく行う作業を行いやすくする工夫が随所に盛り込まれている。
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