データを活用したターゲティングやパーソナライズの施策を推進すると、「気が利く」と「気持ち悪い」の境界が不明瞭になる問題にぶつかる。気を利かせようとしたばかりに、顧客から不興を買うという問題だ。
データ活用で顧客から気持ち悪いと思われてしまう問題を象徴する事例として、ある海外スーパーの事例がある。本人が気づくより早く、妊娠を察知してダイレクトメールを送ってしまったのだ(i)。
購買データから分かる「特定の香料を用いたシャンプーを長らく使っていたにもかかわらず、ある日急に無香料のものに替えた」事実をもって、妊娠した可能性が高いのではないかと判断したのが原因だった。
ビッグデータもAI(人工知能)も強力な武器である。ただ分析する側も分析される側もまだ発展途上。「気持ち悪い」を回避するすべも習得しきれていない。データ活用の一連の流れは、「収集」「分析」「施策の実行」の3段階に分けられる。それぞれの段階で、「のぞき」「勘繰り」「余計なお世話」といった気持ち悪さを消費者に感じさせてしまうリスクがある。
前述の妊娠予測のケースは、この3つの落とし穴の中では「勘繰り」に分類できる。利用しているデータはよくある購買データであり、決してデータを詐取したわけではない。ダイレクトメールの送付自体も、常識的なマーケティング施策だ。しかし、分析の目的とその結果実施したことがとにかく気持ち悪いように筆者は感じる。
きっと人間は、まだ自分自身の行動をデータで予測されることに慣れていないのだろう。そのような中で、言わばゲスの勘繰りをされていると誤解されないようにする1つの策は、「尋ねる」ことではないだろうか。
ゲスの勘繰りをしていると思われないために
実際に、尋ねることでうまくやっている事例もある。あるスーパーは、「買い物予定のリスト」を管理できるアプリを提供し、顧客が何を買おうとしているのかの情報を集めている。例えばカモミールティーを買おうとしている顧客に対して、「カモミールティーにこのハチミツを入れるとおいしいですよ」といったお薦め情報を提供している。カモミールティーを買うことは、リストにより明らかなので気持ち悪くない。
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