米ウォルマートは2016年から、「エデン」という生鮮食品の品質管理ツールを利用している。例えば、店員が店頭のリンゴに貼られている2次元コードをハンディー端末で撮影すると、「リンゴ(品種:ハニークリプス)5ポンド、袋入り」といった販売情報に加えて、産地から店頭までどのように運ばれてきたのかも分かる仕組みだ。

店舗や配送センターでセンサー技術と画像認識を使って、生鮮食品の鮮度を管理するのがウォルマート流だ(写真/Shutterstock)
店舗や配送センターでセンサー技術と画像認識を使って、生鮮食品の鮮度を管理するのがウォルマート流だ(写真/Shutterstock)

 米ウォルマートの品質管理ツール「エデン」は、売り物の生鮮食品が輸送の最中に加圧状態にさらされていないか、温度管理は一定だったか、目で見て分かる傷みはないか、といった状態をセンサーと画像認識で特定できる(i)。米農務省が定める鮮度基準への適合判定に加えて、店頭での販売が可能な日数はどのくらいかについても定量評価を行っている。

 これまで生鮮食品の鮮度判定は、店員の目視に依存していた。それが標準化できたわけだ。

 輸送途中の評価は、配送センターで行う。販売可能な日数が予想外に短いことが分かれば、配送先をセンターの近隣店舗に変更するなどの対応に生かしている。今後は、搬入された順に店頭に出すのではなく、販売可能な日数に応じて店頭に出す順番を変えることも検討しているという。

 2016年に導入してから18年度半ばまでに、既に8600万ドル分の食品廃棄を削減。今後5年間で、20億ドル分の削減を目標にしている。

 似た取り組みを、業界ぐるみでルールとして定めているのが医薬品業界だ(ii)。命にかかわる製品だけに輸送中の変質は問題。しかも、単価の高さ故に、偽薬を混入されるリスクもある。安全に、犯罪を避けつつ、適切に輸送・保管することが求められる。そこでGDP(Good Distribution Practice)と呼ばれる業界標準の薬品管理手法を定め、国際的なガイドライン整備も進んでいる。

医薬品の輸送管理でもイノベーション

 GDPでは、「輸送中を含めた保管状況の監視」「他製品による汚染や混入の防止」「必要な場所へ、必要な期間内に送付」「不良医薬品を検出できる追跡システムの用意」などの必須要件が決められている。

 医薬品は空輸を伴う長距離輸送されることが多く、一定の温度・湿度で管理され続けることも欠かせない。ただ空港での荷降ろしや、テロ対策のための開放検査など、高温または低温にさらされる可能性がある。

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