消費者の趣味趣向が細分化した現在、企業は一人一人に合わせて製品やサービスを提供する「パーソナライズ」が欠かせない。ただ細分化すればするほど、コストがかかるのも事実。いったいどうすればよいのか、米ネットフリックスを例に見ていく。
個々の客に最適な施策を講ずる「パーソナライズ」には、大きく3つのタイプがある。第1は、その人に最適なモノやサービスをお薦めするパーソナライズだ。EC(電子商取引)サイトのリコメンデーションが、これに相当する。第2はお薦めの仕方、つまり「売り文句」のパーソナライズ施策である。そして第3が、モノやサービス自体をその人に合わせて変えるパーソナライズ。客の体形を計測して、好みの布やデザインに仕立てていくテーラーメードスーツが代表だろう。
本稿では第1と第2のパーソナライズが生みだす効果についていま一度考えてみたい。第1のパーソナライズに早くから注力してきた企業の1つに、米ネットフリックス(Netflix)がある。10年以上前の話になるが、同社は2006年10月に「ネットフリックス・プライズ(Netflix Prize)」と呼ぶ賞金100万ドル(約1億円)のデータ分析コンテストを開催していたことをご存じだろうか。利用者に対して動画をレコメンデーションするエンジンをいかに改良するかを競い合うオープンなコンテストだった。
ネットフリックスは、利用者一人一人に対してそれぞれの視聴履歴に基づいて「視聴されれば、高く評価してもらえそうなコンテンツ」を推奨することに血道を上げ続けてきた。打率をいかに上げるかを象徴する取り組みが、このコンテストだった。ビッグデータという言葉が世間でよく使われるようになる5年以上前から、ネットフリックスはデータ分析の重要性に気付いていたわけである。
そんなネットフリックスが、近年力を注ぐのが第2のパーソナライズだ。具体的には、お薦め動画を表示する際のサムネイル画像を生成する処理を既に自動化・最適化している(i)。1本の動画の中から、主要な出演者が最適な構図にあるシーンを抽出する技術を開発したのである。
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