東北にあるカップル向けのスキー場併設ホテルは、豪雪期には清掃スタッフの確保が難しい。そこで宿泊客を協力者に仕立てることで人手不足を乗り切った。一体どういう“技”を使ったのだろうか。こうした顧客を協力者に仕立てる方策は、さまざまな業界、局面で応用が利く。

イタリア料理店を舞台にした漫画の傑作『バンビ~ノ!』に次のような名シーンがある(i)。
手間のかかる大皿料理「魚介の蒸し煮」を間違えて作りすぎてしまった。スタッフが厨房で怒られるなか、ベテランの給仕長である与那嶺が巧みにその料理をお薦めして注文を取ってくる。「随分できるのが早いじゃない」と言う客に、与那嶺は「この魚はあなた方のような美女を待ってたんです」と言いのける。
吹けない口笛を思わず吹いてしまいそうになるが、この手の連携の大切さと難しさを語る事業者は多い。
ある石油化学品メーカーは「純度の低い製品を必要としている客を探すのが、営業の腕の見せどころ」と語る(ii)。なぜなら石油化学プラントでは、製品が変わるたびに設備の洗浄はできない。そのため切り替えタイミングでは残留物が避けられない。それを許容できる顧客を営業が把握し、交渉するためだ。厨房とサービスの連携と同様、製造の課題を営業で補う。
製造と営業の連携は当たり前に見えて、簡単なことではない。「生産計画が逼迫しているときに限って、営業がやっかいな仕事を取ってくる」といった話はよくある。バンビーノの舞台となるレストラン程度の規模ならば、「厨房でなにか困っているな」と分かるかもしれないが、大企業で同じことを行うのは難しい。
データ活用のテーマ検討をするとき、「異業種データ連携も大切だが、まず社内の部局間連携」「他社との壁より、社内の壁のほうが高い」といった話があるのはそのためだ。昔ながらの役割分担では不十分で、新たな形での連携・協力をすることで合理化できる状況は増えている。データはその結節点となる。
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