米国の小売業界は、売上高1位の米ウォルマート、2位の米クローガーを3位の米アマゾン・ドット・コムが猛追する構図だ。そんな状況下で、上位2社のトップであるCEO(最高経営責任者)、CTO(最高技術責任者)はどんな成長戦略を描いているのか。流通業界の大型イベントで明かされた。
世界中の流通業界の関係者が米ニューヨークに集まる「NRF(National Retail Foundation)」のイベント「NRF 2019 RETAIL'S BIG SHOW」。このコンベンションの見どころの一つが、大手小売りの代表者が、自社の現状と戦略を語るセッションである。
米国の小売業界リーダーと聞くと、今はアマゾンを思い浮かべる人が多いかもしれないが、実は売上高ではトップではない。2018年に英カンターコンサルティングが発表した、17年の米小売企業の売上高トップ100によると、ダントツの1位は総合スーパーである米ウォルマート(売上高は約3748億ドル、米国内に5328店舗)、2位が食品スーパーの米クローガー(売上高は約1159億ドル、米国内に3902店舗)であり、米アマゾン・ドット・コム(約1030億ドル)は3位という順位である。業界1位、2位のウォルマートとクローガーの経営陣が、成長著しいアマゾンにどんな戦略で対抗しようとしているのか、NRFで語った内容を振り返ってみよう。
ネット購入の商品を車まで配達
業界2位のクローガーは、CEOのロドニー・マクミューレン(Rodney McMullen)氏が登壇し、今後の事業展開を語った。クローガーが今、注力しているのが、消費者に「安心な食品」と「便利な買い物体験」を提供することだそうだ。安心な食品としては、プライベートブランド商品「simple truth」が人気で、オーガニックやフェアトレード、添加物不使用を訴求した食品、日用品などが成功しているという。また、消費者からのフィードバックを基に商品開発して品質を高めるということを強調し、「安心な食品」のイメージを高めている。
また、クローガーでの「便利な買い物体験」を実現するため、オンラインと実店舗の体験をシームレスにつなげ、場面ごとの消費者ニーズに合った体験を提供しようと、変革を進めている。マクミューレンCEOは、「顧客はいちいちオンラインだとか実店舗だとかを気にしていない。その時、自分にとって都合のいい場所で、気分とニーズに合った買い物の仕方をし、それを求める」と話す。そうしたニーズに合わせるために、消費者にとって「便利」かつ「身近」な実店舗にすることに力を入れる戦略だ。
便利さを実現するために、ネット購入した商品を実店舗で手軽に受け取れる仕組みを充実させた。ウォルマートも18年から導入したものだ。ドライブスルーのようなピックアップサービスもその一例で、時間指定をするとスタッフが商品を車まで運んできてくれるのだ。店舗のスマート化、アプリなどのテクノロジーの活用を進めており、そのスピードを加速するために、米マイクロソフトとの提携も発表した。
また、より「身近」な場所での買い物を可能にするため、18年10月より、大手ドラッグストアの米ウォルグリーンと協力し、同店舗内に「ミニクローガー」を設置する実証実験をケンタッキー州で開始した。
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