米国では身近な人工知能(AI)としてAIボイスアシスタントが生活に浸透しつつある。米アマゾン・ドット・コムと米グーグルの2強が市場を確立するため、膨大な資金と人的リソースを投下している。AIボイスアシスタントは生活を便利にするのが目的だ。マンションの機能をAIで制御しようとするスタートアップも登場した。
2019年1月8日に米ラスベガスで開幕したデジタル技術の総合展示会CES。会場では家電や自動車に加えて、アマゾンとグーグルのAIボイスアシスタントが注目を集めていた。昨年同様にグーグルが会場の外でも「Hey Google」の広告を大々的に展開した。Hey Googleは同社のAIボイスアシスタントを起動するためのキーワードで、対応製品を用意する各社のブースにもロゴが掲げられた。
一方、アマゾンはCESで同社のAIボイスアシスタント「Alexa」対応のデバイスを宴会場を貸し切って一堂に展示。Amazon Alexa部門のスティーブ・ラブーチン バイスプレジデント(VP)が「今年のCESは一般の方に初めて公開したが、エキサイティングだ」と言うように、多くの来場者でごった返していた。
アマゾンが2018年秋に家電をAlexaに対応させるための開発キットを提供するなどで、バリエーションが一気に拡大。展示は冷蔵庫や調理器具から、楽器やメガネ、コンセントやスイッチまで数百種類におよんだ。
アマゾンはクルマ向けAlexaの市場開拓に乗り出した。ラブーチンVPは「今、クルマ向けに注力している。後付けのパーツとしてだけでなく、クルマそのものにも組み込まれていく。2018年秋から開発キットを提供しており、クルマメーカーも開発をしているところだ。メーカーとしては、BMWやアウディ、トヨタなど多くが賛同してくれている」と説明する。クルマの中ではスマホを操作できないので、Alexaとの対話で様々な用事を済ます活用シナリオを示していた。
例えば、クルマで外出後に家のカギをかけたかどうかをスマートロックで確認したり、思いついた買い物をTODOリストやeコマースのショッピングカートに加えたり、といったシナリオを示していた。この他、家のベッドで昨晩読んでいた電子書籍の続きをクルマの中で読み上げてもらうこともできる。
Alexa Autoに対応したアウディ車も展示した。アウディの外部連携機能から上記のようなAlexa機能を呼び出すことができる。Alexaのスマートホーム機能とも連携する。家やオフィスに向かうクルマの中から、部屋の温度を確認し、好みの温度に調節するといった活用法だ。
AIボイスアシスタントの有望市場としてホテルなどの宿泊施設もある。照明やエアコンのコントローラーの場所が分からなくても、部屋に入ってすぐに声で操作が可能になるからだ。
ラスベガスのホテル街にある大型ホテルの「ウイン」。そこでは一部の客室をAlexaに対応させた。筆者が当初予約した部屋は対応していなかったものの、フロントで聞いたところ30ドルほどの追加でAlexa対応の部屋に変更してくれた。デスクの上にAIスピーカーのEchoが備え付けられており、同ホテル専用のコマンドが利用できるようになっている。
部屋に入って試しに「アレクサ、ターン・オン・ライト」と言うと照明がついた。暗い場所でスイッチを探す必要がないので便利だ。ベッドで読書しながら、エアコンの温度を調整することもできる。「オープン・ザ・カーテン」でカーテンが開く。音声で「ドント・ディスターブ」や「ハウスキーピング」のサインを点灯させることも可能だ。
プライバシーにも配慮する。顧客がチェックアウトしたらデータを消しているという。日本のホテルでの展開について、Amazon デバイス部門 Smart Home事業担当のダニエル・ラウシュ バイス・プレジデント(VP)は「こうご期待」と言う。
アマゾンはAIのなかでもボイスアシスタントのAlexaにリソースを集中させている。ラウシュVPは「我々はAIとAlexaに相当な投資をしている。1万人以上のエンジニアでAlexaの開発に取り組んでいる」と明かす。
テクノロジーとしてはAIに加えて、クラウドもカギを握る。「機械学習やディープラーニング、ある領域で学習した内容を移転するトランスファーラーニングも必須。そしてAWSのようなクラウドの演算資源も不可欠だ」(ラウシュVP)という(最終ページにラウシュVPのインタビューを掲載)。
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