AI(人工知能)の研究開発もビジネス活用も日本より一歩進んでいる米国と中国。そのAI先進国の実力を紹介する特集の第2回。商用ドローンで世界シェア7割を誇るDJIやディープラーニングによる高い顔認識技術を持つセンスタイムは、中国を代表するユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場企業)だ。製品化するスピードは、一般的な日本企業を上回る。

「日本市場はポテンシャルが大きい。日本の顧客の要望に応えていきたい」と日本市場担当マネジャーの李南(Ruby Li)氏
「日本市場はポテンシャルが大きい。日本の顧客の要望に応えていきたい」と日本市場担当マネジャーの李南(Ruby Li)氏

 「農業分野では当社のドローンを活用することによって、農薬散布時の生産性が40倍に向上した。空中からドローンで農薬を散布すると、地上で人が農薬を散布する場合に比べて、最大で数十倍の時間効率化につながる。農薬散布のほか、DJI製ドローンを使って肥料散布や種まきを行っている」

 こう話すのは、商用ドローンで世界シェア7割を誇るDJIの日本市場担当マネジャーである李南(Ruby Li)氏だ。日本企業とはパートナーシップ契約を結んでおり、例えば、測量分野ではコマツやトプコンと契約している。農業分野では、農薬メーカーや農業法人などがDJIのパートナー企業になる。「日本の法律や規制についてしっかり学んで、日本企業の要望に応えていきたい」と、李氏は日本にラブコールを送る。

鉄塔の点検作業が約3倍効率アップ、480万ドルコスト削減

 各種点検分野でも日本企業と協業しているDJIだが、まだ公表できる段階にはないという。ただ、海外の事例だが、某通信会社は1万5000基の鉄塔点検において、DJI製ドローンの活用で480万ドルのコスト削減を実現できたという。既存作業と比較して約3倍の効率化だ。また、作業員の安全確保も実現できた。

 DJIは東京・品川と埼玉県(アフターサービス)に拠点を持ち、「ポテンシャルが高い」(李氏)という日本市場の開拓に力を入れている。「多くの日本企業はDJI製ドローンを、データを取得するIoTと捉えている。ドローンの3次元空間の有効利用、既存業務効率化(コスト削減)からスタートするケースが多いが、ドローンによる新ビジネスを視野に入れている日本企業もいらっしゃる。当社と付き合っている日本企業はとにかく積極的だ」と、李氏は日本市場での現状を解説する。

民生用と産業用のドローンで世界のパイオニア

 李氏は、DJIはグローバル企業だと強調する。2006年設立のDJIは世界に17の拠点を持ち、約1万4000人の社員が働いている。そのうち約25%がエンジニア。李氏は「民生用ドローンと産業用ドローンで世界に貢献しており、パイオニアだと自負している。安全なフライトを確保するために衝突の回避機能を備えるだけでなく、スマホに表示される地図をタップするだけでドローンを目的地に向かわせられるなど使いやすさを実現している。当社のエンジニアは『もっといいもの』を開発するため、日々挑戦している」と、DJIがいかにイノベーティブであるかをアピールする。

 世界から人材を採用しており、「新しいアイデアを実現したいという人材がたくさんいる。優秀であれば、年齢に関係なく開発を任せる。例えば、入社したばかりの若いエンジニアにあるドローンの開発を任せたことがあった」(李氏)。

 DJIはAIを活用しているが、詳細は明らかにしていない。恐らく、画像認識でディープラーニングを活用していると見られる。

	最大飛行時間30分と長時間飛行を可能にし、最大制御範囲は4キロメートルを実現したDJI製ドローン「PHANTOM4PRO」
最大飛行時間30分と長時間飛行を可能にし、最大制御範囲は4キロメートルを実現したDJI製ドローン「PHANTOM4PRO」

 中国・深圳(しんせん)市にあるDJIの本社1階はショールームになっていて、これまで開発・製品化してきたさまざまなドローンが展示されている。農業、エネルギー、建設、公共(人命救助など)、測量といった領域にふさわしいドローンが、ところ狭しと並べられている。DJIインターナショナルPRの王琴(Cami Wang)氏は、「2016年ぐらいからインダストリアル(産業用)分野向けのドローンの開発に力を入れるようになった」と説明する。

 中国政府公表の「2017年中国ユニコーン企業発展報告」によれば、DJIの評価額は100億ドル。中国でもベスト20に入る、深圳市を代表するユニコーン企業だ。深圳市には、DJI以外にもロボット系のスタートアップ企業なども数多くあり、AIを活用して人間をアシストするロボットを開発・製品化している。深圳市はもともと「世界の工場」と呼ばれた、ものづくりのメッカ。ハードウエアとソフトウエアの融合製品と言うべきドローンやロボットの開発にはもってこいの拠点だと言えよう。

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