トヨタ自動車の「変革の現場」を追うノンフィクション連載。第33回は物流会社のカリツーで話を聞いた。サプライヤーから工場まで部品を運ぶ「調達物流」でトヨタがカイゼンに取り組んだ結果、パートナーである物流会社には具体的にどんなメリットがあったのか。
物流カイゼンはトヨタ1社ではできない。物流会社、そしてサプライヤーが関わっている。そこで、ふたつを見に行ったのだが、最初に訪ねたのはトヨタ自動車九州の宮田工場から車で10分ほど走った場所にあるカリツーの中継地(デポ)だ。
カリツー。元の名前は刈谷通運という。トヨタの本拠地である愛知県豊田市の隣、刈谷市で生まれた自動車部品や完成車を専門とする物流会社である。同社課長の小野内誠は会社について、にこにこしながら話を始めた。
「わたしどもの本社は愛知県安城市の三河安城町にあります。取引先はほぼトヨタ関係のサプライヤーで、売上高は2017年で約548億円。従業員は約2500名、トラックの保有車両数が913台。売上高の7割はトラックによる運搬で、残りはこの中継地のような、倉庫の保管業務です」
続いて、彼が教えてくれたのは物流カイゼンの結果、カリツーが得たメリットだ。
「なんといっても中継地のなかがすっきりと整理整頓されました」
輸送の中継地点から、付加価値を生む場所へ
トヨタが新たに導入した「ミルクラン方式」では、ルートを決めて部品を集荷する。サプライヤーはその時間に合わせて、部品を作り、送り出さなくてはならない。多くてもダメだし、少なくてもいけない。後の工程が取りに来る時間に合わせたライン生産をすることになる。ミルクランに参加するには、サプライヤーのなかでもトヨタ生産方式が確立されていなくてはならない。
それまでは各協力企業がそれぞれトラックを手配していた。むろん、トヨタが納入時間と量を指定していたから、それに合わせた生産はしていた。しかし、ミルクランに参加できるほど厳密だったわけではない。
物流会社であるカリツーは取引先の各サプライヤーから部品を集荷し、それをいったん中継地に持ってきて、仕分けをし、別のトラックに積み直して宮田工場に出荷していた。近隣のサプライヤーの部品だけでなく、他の地域から鉄道や船でやってきた部品も加わるから、中継地の内部は、以前は部品で足の踏み場もなかった。
それが今回のカイゼンによって、サプライヤーから出荷される部品の量は、集荷するトラックにちょうどよく収まるように事前に調整されるようになった。そのため、かつて仕分け作業に使っていたエリアが今はすっきりして、2階のスペースではユニット部品を作ることもしている。ただの中継基地から、付加価値を生む仕事をする場所に生まれ変わったのである。
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