トヨタ自動車の「変革の現場」を追うノンフィクション連載。第30回は、サプライヤーから工場まで部品を運ぶ「調達物流」の現場へ。ジャスト・イン・タイムで生産ラインへ部品を届けるのがトヨタ流だが、工場の立地が広域になり、見直しが必要に。「軒先渡し」から「ミルクラン」へ大転換を進めている。
大規模なカイゼンが始まったばかりと言えるのが「調達物流」だ。サプライヤーから工場まで部品を持ってくる物流である。
部品を工場に運ぶ場合の大原則はジャスト・イン・タイムであること。つまり、工場にあるのは一定量の部品だけという状態を保持することだ。一定量とはだいたい4~8時間分とされている。道路が台風や雪などでしばらく通行できず、部品が調達できない場合は、工場を止めることになる。
また、調達物流は主に国内のサプライヤーから国内の工場への動線を言うが、国内から海外へ、あるいは海外から国内への部品調達もある。トヨタの海外工場には主なサプライヤーが一緒に出て行って、現地で部品を作っているけれど、稀に、一か所でしか作っていない部品がある。そういう部品は船で運ぶか、災害時などの緊急の場合は飛行機を使うこともある。
高級オーディオや牛革シートを飛行機で
今回の取材に同伴してくれた物流管理部長の一柳尚成は、実際に飛行機で部品を届けた経験がある。
「アメリカの西海岸で大きな港湾ストライキ(2014年11月)がありました。その時は飛行機を飛ばしてでも部品をつなげ、ということになりました。アメリカから日本のレクサス工場までマーク・レビンソンという高級オーディオを、そして、メキシコから牛革シートを、飛行機で持ってきたことがあります」
理由はこうだ。
「マーク・レビンソンの工場はメキシコにあるだけなので、船で間に合わなければ飛行機に載せるしかありません。また、シートに使う牛革も調達するのはメキシコです。牛革は一枚革では輸入できません。シートの形状に沿った形にカットしたものになって初めて輸入することができる。そこで、形状に合わないものが入っていたら、急遽、調達しないといけないんです。なにせ、シートの形状はレクサスのLSだけでも140種類以上もあるものですから。
飛行機で運ぶと船よりも10倍以上のお金がかかります。しかし、それであっても、工場を止めるよりはいいということなんです」
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