トヨタ自動車の「変革の現場」を追うノンフィクション連載。第29回は「船上のギャングたち」を訪ねた。完成車の輸出には専用船が使われる。港からその船内へ、ムダな時間をかけず、ムダなスペースを作らずに多くの車を積み込むギャングたちの職人技がトヨタの完成車物流を支える。

専用船に積み込まれた車は、わずか車間10センチで並び、きっちり固縛されて海外へ
専用船に積み込まれた車は、わずか車間10センチで並び、きっちり固縛されて海外へ

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 トヨタが「完成車物流」のカイゼンとして九州で実施したのは、車をキャリアカーに積み込むスペースに屋根を付けて屋外作業をやりやすくしたことの他、スマートフォンを使ってドライバーの確認作業の負担を軽減したことなどが挙げられる。ただ、屋根の据え付けもスマホ利用も説明がなければ、どこが効率的になったのかはすぐにはわからない。

 一方、ひと目見ただけで、効率的でしかも職人技だなと誰もがわかるのが、船積みヤードから自動車専用船に車を上げていく工程だ。

前後30センチ、幅10センチの車間でピタリ

 「ギャング」と呼ばれる小集団が船積みヤードから新車に乗り込み、船のなかへドライブしていく。新車を並べる場合、1台でも多く船積みするため、前後の車間は30センチ、隣の車との幅は10センチという、わずかな隙間にする。熟練の乗り手でなくてはできない技だ。

 わたしが見たのは香椎モータープールにおける積み込み作業だった。船は2000台が載る「TOCHO」という専用船である。その船に22人のギャングが2日がかりで車を載せる。

 2000台の自動車専用船は、外観こそ「船」だけれど、内部に入ると、立体駐車場だと感じる。ショッピングモールに付設してある5階建て、6階建ての立体駐車場なのである。だから、船のなかへ運転していくことについては問題はない。誰でも簡単にできる。しかし、そこから先は熟練の人間でなければ絶対に不可能だ。

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