トヨタ自動車の「変革の現場」を追うノンフィクション連載第26回。生産技術の発展は「環境への負荷が少なく、外部との通信接続によってさまざまなサービスを利用でき、自動運転で移動できる」自動車を実現しようとしている。さて、それは顧客が「本当に求めているもの」と合致しているのか。
2017年に内閣府が発表した調査がある。「子供・若者の意識に関する調査(平成28年度)」というものだ。10代、20代の人間の生活の実態、さらに何を大切にして生きているかをアンケートしたもので、調査の大半は若者とコミュニケーションについての意識に費やされている。
「他人と楽しく話せる関係を常時、持っていたい」
たとえば、「他者との係わり方」と題されたそれには、家族、親族、友人、職場関係者とのかかわりで重要なことは何かを訊ねている。調査結果は以下の通りだ(詳細なデータ及びグラフは内閣府「子供・若者の意識に関する調査(平成28年度)」参照)。
家族・親族との係わりとして、「そう思う(計)」が最も高いのは、"楽しく話せる時がある"(81.0%)。次いで"困ったときは助けてくれる"(78.4%)、"強いつながりを感じている"(69.7%)と続く。
(2)学校で出会った友人との係わり方
学校で出会った友人との係わりとして、「そう思う(計)」が最も高いのは、"楽しく話せる時がある"(76.9%)。次いで"困ったときは助けてくれる"(65.0%)、"強いつながりを感じている"(59.6%)、"会話やメール等をたくさんしている"(59.5%)と続く。
(3)職場・アルバイト関係の人との係わり方
職場・アルバイト関係の人との係わりとして、「そう思う(計)」が最も高いのは、"楽しく話せる時がある"(58.7%)。次いで"困ったときは助けてくれる" (50.6%)、"会話やメール等をたくさんしている"(35.5%)と続く。
これから社会の中核になっていく人々が人生で大切にしているのは「他人と楽しく話せる関係を常時、持っていたい」という願望だ。家にいても、外にいても、モバイル機器があれば楽しく話すことができる。さらに、困った時は相談をする。会話やメールをたくさんする。
考えてみれば、これはすべて、自動車メーカーが「つながる車」によって「コネクティッド」な環境を実現することで、客に提供しているサービスだ。客は車載通信機を通して、オペレーターと「楽しく話したい」。事故やガス欠など「困った時は助けてほしい」。そして、車のなかでも「会話とメールが欲しい」。
自動車業界の話題と言えば自動運転とEV(電気自動車)ばかりだけれど、肝心の自動車に乗る人々の関心は、人とつながることに向いている。
提供すべきは、コネクティッドな空間
かつてモータリゼーションの時代、人が車に望んだものは性能とデザインだ。速く走る車、馬力のある車、かっこいいデザインの車だった。
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