トヨタ自動車の「変革の現場」を追うノンフィクション連載。第25回は、トヨタの「つながる車」サービスを支えるトヨタコネクティッドの「コンタクトセンター」を訪ねる。レクサスなどのドライバーが車載通信機を通じて投げかけてくるさまざまな質問に、巧みに答える「オペレーターの仕事」に迫る。

レクサスなどの車載通信機を通じてドライバーの質問に答えるオペレーターは、トヨタ自動車と顧客が直接つながる接点。文字通りの最前線を担う存在だ(Shutterstock.com)
レクサスなどの車載通信機を通じてドライバーの質問に答えるオペレーターは、トヨタ自動車と顧客が直接つながる接点。文字通りの最前線を担う存在だ(Shutterstock.com)

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 テレマティクスサービスを提供してトヨタの「つながる車」事業を支えるIT会社、トヨタコネクティッド。その社員で、運転中のドライバーから車載通信機を通じて届くさまざまな質問に答える「オペレーター」の女性に話を聞いた。彼女はベストパフォーマンス賞の受賞者だ。入社してから7年間、オペレーターをやっている。入社前の経歴はカラフルだ。大学の哲学科に学び、バンド活動に励んだ。大学を出た後、彼女は組織の正社員にはならなかった。

音楽とおもてなしから、テレマティクスへ

 「音楽とおもてなしが大好きだったから」喫茶店、リラクゼーションサロンなどのサービス業に従事しながら演奏活動を続けた。10年間、アルバイト生活をした後、キーボード奏者の夫の生まれ故郷、名古屋に移り住んだ。名古屋でもまたリラクゼーションサロンで働いていたのだけれど、社長が給料を遅配したので、さて何かいい仕事はないかなと思っていた時、テレマティクスサービスに出合った。まさに偶然の出合いである。

 「知人のレクサスに乗せてもらった時、その人が、『このボタン何か知ってる?』みたいな話になったんです。『あのね、ここを押すと声のきれいなオネエちゃんが電話に出てきて、何でも教えてくれるんだよ』って。今思えば、知人は勘違いしていて、彼が言っていたボタンはヘルプネットといって、いわゆるオペレーターサービスとは別のものなんですが……。聞けば知人は持病を持っていて、車のなかで苦しくなった時、ヘルプネットのボタンを押したら、命を救われたんだそうです。これはすごいサービスだな、やってみたいなと思って、レクサス担当デスクに応募したんです」

「近所にあるそば屋に行きたい」

 彼女が入社したのは2013年の7月だ。「どうしてもオペレーターをやりたかったから」、以前にアルバイトしていた銀座の喫茶店のマダムを探し出して、推薦文を書いてもらい、応募書類に添付した。そして、入社する。

 「入社した後の教育ではまず車に関する知識を学びました。レクサスの車種はいくつあって、どんな特徴を持っているのか、レクサスのブランドイメージはどういったものなのかなどです。その後、DCMという車載通信機とナビゲーションのオペレーションツールの操作方法について習いました。それから、あらためて敬語の使い方を勉強しました。ひと通り、授業が終わった後、ロールプレイングで先輩たちが出したお題を自分で解決するという訓練が始まりました」

 先輩社員が車のドライバー役となり、新人オペレーターに問い合わせをするのである。

 彼女が聞かれたことは次のようなことだった。

 「この近所にあるそば屋に行きたいけれど、予約してくれる?」

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