トヨタ自動車の「変革の現場」を追うノンフィクション連載。第19回は自動車会社とファブレス(水平分業)について考える。従来は自動車会社が部品メーカーや販売店を系列化する垂直統合方式が主流だったが、EV(電気自動車)などの生産では家電のように取引先を固定しないファブレス生産が増える。危惧される問題とは? 販売体制への影響は?
自動車生産の現場を変える「ファブレス」
自動車産業の開発、生産はファブレスに近づいている。ボッシュ、コンチネンタル、デンソー、アイシンといった巨大部品メーカーはEV、自動運転車などの基幹システムを開発する能力がある。自動車会社だけが新車、基幹システムの開発、生産を行う時代ではない。
すでに携帯電話や家電の業界ではファブレス生産が定着している。自社工場で最初から最後まで生産する垂直統合ではなく、自社工場を持たず、新興国の大規模工場に生産を委託するファブレス生産が家電では当たり前になりつつある。
ファブレス生産は水平分業方式とも呼ばれている。サプライヤーを固定化せずにその時々の条件に合わせて、部品、組み立てメーカーを選ぶ方式で、取引先を固定化しないのが特徴だ。そのためサプライヤーは危機感にあふれている。企業努力をくり返し、原価を下げる。そうしないと、ファブレス企業からの発注を受けられないからだ。
既存の自動車会社は垂直統合方式が多いが、EVが主流になれば部品が減るため、ファブレスメーカーが次々と誕生するとされているし、実際、中国では民族系資本のEV、自動運転専門の自動車会社が続々と生まれている。いずれ他の新興国でも出てくるだろう。また、掃除機で知られるダイソンのような異業種からの参入もある。どこも大金を投じて自社工場を建てはしないだろうから、これからのEVや自動運転車の新会社はファブレスにならざるを得ない。
ただ、ひとつ問題がある。携帯電話や家電は人が乗るものではないし、高速で移動したりはしない。対して自動車は部品が欠陥品だと「事故」につながる。
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