トヨタ自動車の「変革の現場」を追うノンフィクション連載第4回。豊田章男が作った「理想の現場」を訪ねて一路、中国・広州へ。顧客と生産をつなぐ「製販一体」の現場で最先端のシステムに目を向けながら、それを支える「源流」の強さを改めて実感する。

豊田章男社長が作った「理想の現場」、広汽トヨタへ(写真提供:トヨタ自動車、以下同)
豊田章男社長が作った「理想の現場」、広汽トヨタへ(写真提供:トヨタ自動車、以下同)

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 トヨタ副社長の友山茂樹を訪ね、「理想の現場は広州にあり」と聞いてから1か月後、わたしは中国の広州空港にいた。

 入国審査もストレスなく、行列もスムーズに進んだ。入国審査のブースは「中国人」「外国人」と「航空会社社員」の3つに分かれていたから、わたしは「外国人」の列に並ぶ。中国人と航空会社社員のブースはすぐに列がなくなった。すると、係員が「あっちへ行け」と空いていたふたつのブースの方に誘導したのである。

 成田空港でも羽田でも、帰国するたびに見かける風景が入国審査で並ぶインバウンド客の姿である。外国人が長蛇の列に並んでいる一方、日本人ブースは空いている。かといって、係官が日本人ブースを外国人に開放するのを見たことがない。日本の役人は杓子定規だから、融通を利かせて、外国人観光客のストレスを減らそうとは思わないのである。「おもてなし日本」を標榜している割に、行動が伴っていない。

 広州の空港係員の方がはるかに臨機応変で、客のことを考えている。空港での、おもてなしは広州の方が上だった。

 さて、難なく空港を出たら、日に焼けたおじさんがひとり立っていた。広汽トヨタ、業務改善部の部長、浅井雅弘である。迎えに来てくれた浅井が白のアルファードの扉を開けてくれた。そして空港からトヨタの工場までは1時間30分だった。

 広州は北京、上海と並ぶ中国3大都市のひとつ。人口は1450万人で東京と同じくらいである。町の中心部には高層ビルが立ち並ぶ。道幅は広く、街路樹も等間隔に整然と植わっている。手入れも怠りない。広州中心部を写真にしたら、現地を知らない人はテキサス、もしくはカリフォルニアの風景と思うだろう。

 広汽トヨタが設立されたのは2004年。国営企業との半分半分の合弁である。17年の販売台数は44万390台で、中国国内でのシェアは1.85%。作っているのはカムリ、レビン(カローラの同型車種)などである。なお、中国の新車市場は約2900万台。アメリカの1700万台、日本の500万台と比べても図抜けて多い。

 トヨタは28か国に53の製造事業体を持っているが、そのうち、広汽トヨタはトップ10に入る広さだ。敷地面積は252万㎡。東京ディズニーランドが5個分くらいである。

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