米国などではダイナミックプライシング(DP)が普及しているが、価格変動に対する消費者の不信感もある。飛行機であれば隣の席に座っている乗客と条件はほぼ同じなのに、高い料金を支払っているという不公平感だ。こうした不満を解消するサービスも現れている。

北米ではダイナミックプライシングに対抗するスタートアップのサービスが続々登場している
北米ではダイナミックプライシングに対抗するスタートアップのサービスが続々登場している

チケットを今買うべきかをアドバイス

 米国には飛行機や宿泊の価格を比較するサイトが多数ある。そうした中、DPを逆手にとって差異化を図るスタートアップが出てきている。AI(人工知能)によるビッグデータ分析がそれらを後押ししている。

 「Hopper」は利用したい旅程の条件を設定すると、AIがチケットを今買うべきか待つべきかを予測してくれるサービスだ。カナダのモントリオールに本拠地を置くホッパーが提供するスマートフォンのアプリで、約3400万のダウンロードを誇る。

 特徴はチケットを今買うべきかどうかをシンプルに教えてくれることだ。

「Hopper」で、行き先と時期を設定するだけでいい
「Hopper」で、行き先と時期を設定するだけでいい

 例えば、2月にサンフランシスコからニューヨークへの旅行を計画しているとしよう。アプリ上で、発着の空港を入れると、カレンダー上に4段階で料金を示してくれる。

 そこで2月16日から20日までが一番安いようなので指定すると、往復で237ドルという料金を提示してくれた。そして「今すぐ予約すべき(You Should book Now)」とのアドバイスも示した。確かに最安値の水準と考えられる。

「Hopper」でホノルル便を検索したところ
「Hopper」でホノルル便を検索したところ

 一方でサンフランシスコからハワイ・ホノルルまで、3月の高い時期でチケットを検索したところ、536ドルだった。そして「2カ月の間に421ドルまで115ドル下がる可能性がある」「直前には価格が55ドル上がる可能性がある」といった予測も示してくれた。

 ホッパーによると95%の正確性で出発の1年前から予測できるという。リアルタイムの航空運賃データを収集しており、それらを過去のビッグデータも含めてAIが分析している。また、同社のデータサイエンティストが日々AIのアルゴリズムを改良している。


好みを把握し、異なる行き先を提案

 すぐにチケットを購入するだけでなく、今後の価格推移をウオッチできるのもHopperの特徴であり、ここで独自のレコメンドを行うのが同社の強みだ。

「Hopper」でウオッチしているチケット
「Hopper」でウオッチしているチケット

 Hopperは利用者の検索履歴を通して、AIが利用者の好みを把握。それを基に行き先や時期を変えたレコメンドを行う。

 例えば、ホノルルであれば、他の安い時期や、他のリゾート地で安い便を提示するといったものだ。そもそもの旅行の条件を変えてしまうことで、料金に敏感な利用者の満足度を高めるのが狙いだ。

 Hopperのビジネスモデルは予約の手数料であり、広告は出していない。手数料は利用者と航空会社の両方から得ている。


予約と値下がりを自動検知してくれる

 安値のアラートが来ていても、それに反応しないとまた上がってしまうかもしれない。こうした課題に対応したのが米スタートアップのサービステクノロジーズだ。

「Service」のWebサイト
「Service」のWebサイト

 サービスの「Service」は、ホテルのサイトの価格をチェックし続けて、安くなったら自動で予約をし直してくれる。まさにDPキラーと言えるサービスだ。

 どのホテルのどの部屋をいつ予約したのかは、利用者のメールをクロールして自動で把握する。Gmailなど利用しているメールアドレスのパスワードを入力することになる。

 ホテルチェーンは、ヒルトン、ハイアット、マリオット、スターウッドなど特定のチェーンが対象だ。変更可能なプランを予約した場合に限られる。

ウーバーの始めた「Ride Pass」
ウーバーの始めた「Ride Pass」

 DPが根付く米国では、それを逆手にとったサービスを提供するスタートアップが出てきた。今後、大きな流れになれば、航空会社やホテルチェーンなどサービス提供側は新たなプライシングの仕組みを見いだす必要もありそうだ。

 例えば、ライドシェアの米ウーバー・テクノロジーズは毎月14.99ドルを支払うことで、任意の2地点間の料金を固定するサービス「Ride Pass」を2018年10月に始めた。米国内のロサンゼルスやデンバーなどエリアを限定して始めており、通常の乗車も料金が最大15%割り引かれる。

 料金の固定は1ルートのみ可能で、自宅と会社や空港などよく利用する経路を登録しておけば、需要増によるDPを回避できる。渋滞や事故などの影響も避けられる。

 米国ではウーバーとリフトのサービスを比べて、安い方を利用するのが一般的になりつつある。そうした利用者に対して、Ride Passによる囲い込みを進める狙いもある。


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