プロ野球でいち早くチケットの価格変動制を採用したのが東北楽天ゴールデンイーグルスだ。2009年から試合の人気に応じて5段階の価格テーブルを指定し、17年からはダイナミックプライシングを導入した。18年は最下位だったが、入場者数は過去最高を記録した前年に対し、微減で食い止めている。

2018年シーズンは最下位に終わった楽天イーグルスだが、ホームゲームの年間入場者数は170万人を超えた(©Rakuten Eagles)
2018年シーズンは最下位に終わった楽天イーグルスだが、ホームゲームの年間入場者数は170万人を超えた(©Rakuten Eagles)

 仕事始めの1月4日、東北楽天ゴールデンイーグルスの球団副会長だった星野仙一氏の没後1年に当たり、本拠地・楽天生命パーク宮城には半旗が掲揚され、球団職員が黙とうを捧げた。弔いV奪回の決意で挑んだ昨シーズン(18年)の楽天イーグルスだったが、早々にペナントレース争いから脱落し、3年ぶり6度目の最下位でシーズンを終えた。

 プロスポーツでは原則、チームが強いことが最も強力な集客要素となる。では最下位に終わった18年の楽天イーグルスの観客動員はどうだったのか。18年の主催試合の入場者数は約172万6000人。3位で過去最高の約177万人を動員した17年には及ばなかったが、5位だった16年の約162万1000人より10万人以上多い。また、18年4位のオリックス・バファローズ、5位の千葉ロッテマリーンズより入場者数は上回っている。

 観客席を増築しているため15年以前とは単純比較はできないものの、昨シーズンの楽天イーグルスは最下位ながら球団史上2位の観客動員だった。この集客に寄与したのが、17年からチケット販売に導入したダイナミックプライシングである。チケット販売開始後に売れ行きの良い席種を値上げして収益を確保しつつ、芳しくない席種は値下げして割安感を打ち出すことで、黒星が続く状況下でも入場者の減少を食い止めた格好だ。

09年から「フレックス・プライス制」を導入

 楽天イーグルスがチケットの価格変動制に取り組み始めたのは、球団創設5年目の09年に遡る。

 試合の曜日や対戦カードによる客入りの傾向は把握できたものの、チケット価格を全試合一律で据え置いたまま収益および集客を増やす打開策を見いだせずにいた。楽天野球団(仙台市宮城野区)事業本部本部長の大石幸潔氏は、「運営サイドとしてはなるべく集客を平準化させたい。そのための試みとして、試合の人気に応じた価格テーブルを設定した」と振り返る。

楽天イーグルスは段階的に価格変動制を進化させてきた
楽天イーグルスは段階的に価格変動制を進化させてきた

 楽天イーグルスが導入した「フレックス・プライス」は、「プラチナ」から「バリュー」までの5段階。セ・リーグの球団では長らく、集客が見込める巨人戦と他カードで価格を変えている例があるが、それをより細かく設定したものである。例えば、開幕試合や交流試合の巨人戦、阪神戦など集客が見込める試合はプラチナに指定。平日で集客が見込みづらい試合やまだ肌寒い時期のナイトゲームなどはバリューに指定するといった具合だ。

 ファンに配布する試合日程カレンダーには、「6月○日(土曜)の巨人戦はプラチナ指定試合」であることがひと目で分かるように色分けをしていた。週末や夏休み時期の出発は旅行代金が高くなるツアー旅行のパンフレットのような感覚だ。球界で“新参者”だったからこそ、ホテルなど他業界では常識になっていた繁閑差による価格差を球界の常識にとらわれずに導入できた面がある。

 フレックス・プライスは、導入初年度から1試合平均の入場者数を前年比約5%増やすことに成功。13~14年は6段階にしてプラチナの下に「クリムゾン」を加えたり、15年以降は5段階に戻したりと細かな変更はあるが、この運用を続けてきた。

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