ヤフーが「Yahoo!ショッピング」の出店料の無料化に踏み切ってから5年がたち、出店店舗数は無料化前と比較して25倍超にまで拡大した。無料化の意図は、データ取得の加速だ。購買データと既存のメディア事業のデータを組み合わせることで、ヤフーならではの精度の高い広告事業の展開を狙う。

 ソフトバンクの孫正義社長がヤフーのECモール「Yahoo!ショッピング」出店料の無料化を宣言してから5年がたった。無料化を受け出店店舗数は爆発的に増加。無料化の発表時は3万店舗に満たなかったものの、現在は75万店舗超にまで拡大。店舗数だけなら、競合に当たるECモール「楽天市場」の10倍以上だ。2018年3月期のショッピング事業の取扱高は前年度比31%増の6276億円と、好調を維持している。

2018年3月期のショッピング事業の取扱高は前年度比で31%増と好調を維持している
2018年3月期のショッピング事業の取扱高は前年度比で31%増と好調を維持している

 無料化の最大の狙いはサービスの利用を加速することで、購買データを集め、それを広告サービスで収益に結びつけること。その成果が形になりつつある。Yahoo!ショッピングの利用者が広がれば、そこから得られる興味関心データや購買データといったデータが「Yahoo! JAPAN ID」にひも付く形で蓄積される。これらの購買データと、これまでヤフーが提供してきた検索サービスやニュースなどのメディアの利用データを統合的に分析して、広告配信に活用できるのがヤフーの強みだ。

 「『(メディア利用データのような)広くて薄い情報』と『(購買データのような)深い情報』を組み合わせることが当社の強み。例えば、ウイスキーを購入した人がどのような検索行動を取っているのかが分かれば、同じ傾向の人は顧客になる可能性が高いといったことが分かる」とヤフー執行役員メディアカンパニー プラットフォーム統括本部長でCDO(最高データ責任者)の佐々木潔氏は話す。

 デジタル広告業界では推定技術がよく使われる。膨大なデータから、顧客層と近しい層を見つけ出して広告を配信することで、より効率的に顧客を獲得できる技術だ。この推定技術の精度を高めるうえで購買データが重要になる。購買データは広告主にとって顧客そのものを見つけ出す「正解データ」と言えるからだ。「買うかもしれない」ではなく、「買った」を起点にデータを分析することで、より高い精度で類似の顧客層を見つけ出せる可能性が高まる。このとき、幅広くきめ細やかなデータで購買した層を分析して、類似層を見つけ出せるのが、メディア事業から会社をスタートさせたヤフーならではの特徴だ。

 ただし、「購買データはあくまでワン・オブ・ゼム。購買データをヒントに、メディアのデータで顧客層を分析することでメディアでの接触から、検索行動、そして購買までを一貫して捉えられる点に一日の長がある」と佐々木氏。あくまでマルチなデータを取りそろえていることが、他社にはないヤフーの競合優位性だと強調する。

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