ZOZOの前澤友作社長は広告事業への再参入を決めた。3年間で100億円の売上高を目指す。広告市場に異変が起こっている。大手プラットフォーマーの対抗軸の本命として、EC事業者への注目が急速に高まりつつある。楽天は米アドロールグループと共同出資でアドテクノロジー会社を設立した。広告の新潮流と最先端の取り組みを追う。

 「広告事業を3年で100億円の売り上げまで拡大する」

 ZOZOの前澤友作社長は広告事業に参入すると宣言。2018年9月から広告事業を本格化した。ECサイト「ZOZOTOWN」上で検索連動型広告を展開するほか、コーディネートの投稿アプリ「WEAR」にも枠を設けて、広告を配信している。同社は初年度で30億円、2年目には50億円の売り上げを見込む。

 18年10月には子会社で広告事業を推進するZOZOテクノロジーズと博報堂系のメディアレップ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)が戦略的な業務提携を発表。WEARの広告商品を独占販売するほか、今後、ZOZOTOWN向けの広告商品も共同で開発していく方針だ。

 実は、同社は以前、ZOZOTOWNのトップページなどでブランド広告を掲載する広告事業を展開していた。かつてのトップページにはZOZOTOWNという名を示す街を再現したイラスト動画が掲載されており、その架空の“街”にブランドのロゴが表示されるプロダクトプレイスメントのような広告商品を展開していた。

 当時はまだ洋服をネットで買うことが定着する前。ZOZOTOWNを日頃から利用する、ネット通販に慣れた尖った層にアプローチできる広告商品として、トヨタ自動車や日本コカ・コーラなどが出稿をした。その後、EC事業の急速な伸びを受け、本業ではない広告事業を縮小させた。つまり、ZOZOにとって広告事業は再参入となる。

 ZOZOが再参入を決めたのは市場の変化がその理由。以前のZOZOの広告事業はブランディング型が中心。単に枠を設けて広告を配信していたに過ぎない。従来は支持されるメディアを持っていることが強みだったからだ。「Yahoo!JAPAN」のトップページに広告を掲載できる、「Yahoo!JAPANブランドパネル」が広告主に重宝されたのは記憶に新しい。

以前の「ZOZOTOWN」は広告を掲載できるスペースをトップページの上部に設けていた
以前の「ZOZOTOWN」は広告を掲載できるスペースをトップページの上部に設けていた

 ところが、それからネット広告市場は大きく変わった。昨今、広告市場で覇権を握るのはGAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字を取った造語)を中心としたデータプラットフォーマーだ。蓄積した大量のサービス利用データを広告配信に活用することで、広告主がより効率的に顧客層に対してアプローチできる広告商品を提供する。データが増えるほど、ターゲティング精度が向上して、より使いやすい広告サービスへと進化する。利用する広告主が増えれば、その分、閲覧やクリックといった広告に関連するデータの蓄積量も膨大になる。大手プラットフォーマーのデータの寡占は世界的に課題視されている。

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