創造性を生かす仕組みづくりに取り組んできたパナソニックから、新規事業が続々と登場している。今回はアプライアンス社の「ゲームチェンジャー・カタパルト」から誕生した商品で、品質部門の女性社員が起案した介護向け調理器具「デリソフター」を取り上げる。家庭用に2020年3月にも5万~10万円で発売する予定だ。

デリソフターのモックアップ。外観は一般的な炊飯器や加圧調理器に似ている
デリソフターのモックアップ。外観は一般的な炊飯器や加圧調理器に似ている
ふたを開けたところ。開発・生産は国内外のパートナー企業が担当する。家庭用に向けて20年3月にも5万~10万円で発売する予定
ふたを開けたところ。開発・生産は国内外のパートナー企業が担当する。家庭用に向けて20年3月にも5万~10万円で発売する予定

 「食べること」は人が生きるうえで大きな楽しみの1つだろう。しかし加齢や疾病により、かんだり飲み込んだりすることが難しくなると、そうした楽しみは奪われてしまう。介護の現場では、うまく飲み込めない高齢者のために、飲み物にとろみを付ける他、硬い食材を小さく刻んだり、すりつぶしたり、軟らかくする例がある。食べやすくなる半面、食材の外観を大きく損なうため、おいしそうに見えずに食欲が進まない場合もある。調理する側にも作業の負担がかかる。高齢化社会の進展で、こうした嚥下(えんげ)に関する課題は、さらに増加するに違いない。

 2019年4月に設立されたパナソニック発のベンチャーであるギフモ(東京・港)は、食材を軟らかくする調理器具として「DeliSofter(デリソフター)」を開発。20年3月の発売に向け、事業化に取り組んでいる。最大の特徴は、食材の外観はそのままにしながら、口に入れると軟らかくなるように調理する点だ。例えば、実際にブロッコリーを調理して食べてみると、外観はそのままでも、食べると口の中で軟らかくほぐれていく。唐揚げなども口の中で食べやすくなった。介護食のように見えないが、実は介護食になっている。デリソフターの試作機は炊飯器のような外観だが、今までにない調理方法を独自に開発したという。

 「介護食として提供される料理ではなく、周囲と同じような普通の食材を味わいたい、というニーズに対応した。現在は開発途中で、9月には試作品を正式に発表した。来年3月には初回ロットで100台を販売したい」と、ギフモの森實将社長は話す。価格は5万~10万円にする考え。

調理前の食材としてブロッコリーを例に示す。フォークでつぶそうとしても力がいる
調理前の食材としてブロッコリーを例に示す。フォークでつぶそうとしても力がいる
調理後のブロッコリー。外観は変わらないが、簡単につぶせるようになった
調理後のブロッコリー。外観は変わらないが、簡単につぶせるようになった

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