「新しい商品をデザイン思考で開発したいが、社内のリソースが乏しい」。こうした悩みを抱える企業は少なくない。社内のリソースを活用できないなら、外部のリソースに頼ることも一つの手段だ。タイガー魔法瓶やカシオ計算機は高校生とのコラボレーションに挑戦している。

 デザイン思考に対する社内のリソース不足や理解不足に悩む企業に最適なプログラムといえるのが、Curio School(キュリオスクール)が運営している「Mono-Coto Innovation」だ。これは中学生や高校生がデザイン思考を学び、活用することで、企業と一緒になって創造力と実践力を育み、競い合うというもの。さまざまな企業から出題されるテーマに対し、中高生がチームを組み、企業の支援も得ながら、今までにない革新的なアイデアで新商品のプロトタイプを作り上げる。

 毎年12月末には各チームが成果をプレゼンテーションする決勝大会を開催し、優勝や準優勝を決める。デザイン思考のコンサルティングサービスではなく、参加する中高生も金銭が目標ではない。あくまで、教育の一環としての「ものづくり」だが、ユーザーである中高生の「本音」をつかめるだけでなく、中高生が真剣に取り組む姿勢に「ものづくりの楽しさを改めて理解した」など、企業からも高く評価されている。

伸縮するステンレスボトル

 Mono-Coto Innovationに参加した企業の一つがタイガー魔法瓶だ。同社が出したテーマが「中高生が欲しくなる“いまだかつてない”まほうびん」で、このテーマに応じた中高生チーム「にゅーだいれくしょん。」が、本体が伸縮するという今までにないステンレスボトル「のび~マグ」を提案。2017年度のMono-Coto Innovationで準優勝した。

熱心に取り組む中高生の姿勢から、伸縮するステンレスボトルの発想が生まれた
熱心に取り組む中高生の姿勢から、伸縮するステンレスボトルの発想が生まれた
Curio School(キュリオスクール)が運営している「Mono-Coto Innovation」に参加したタイガー魔法瓶が、中高生と一緒に開発したステンレスボトル「のび~マグ」。本体が伸縮するという今までにない商品だ。中高生の日常の悩みから発想した

 ターゲットとなるユーザーは、放課後も部活などで忙しい中高生だ。登校時はカバンの中身が整理されていても、帰宅時は荷物がかさばっているという。自分たちの日常生活や周囲のユーザー観察などから新商品に対するインサイトを得ており、急いでいるときの帰り支度を、少しでもスムーズに行いたいという声があった。そこでリップクリームのように伸縮するステンレスボトルのアイデアが出た。飲み終わったらコンパクトに縮めることができるため、かさばった荷物の中にもスピーディーに収納し、スムーズに帰りの支度ができる。内側は取り外して洗うことが可能な構造になっており、衛生面も考慮している。

 「『新しいアイデアが欲しい』『当社の商品を中高生はどう思っているのだろうか』といったことを知りたかったのが参加理由だった。当初はあまり期待していなかったが、多くの中高生が熱心に取り組んでおり、期待を大きく裏切った。のび~マグは試作品が完成しており、今後は実際に発売していきたい」(小野昌之ソリューショングループ食生活みらい研究所マネージャー)。

試作品を手にする、タイガー魔法瓶の小野昌之ソリューショングループ食生活みらい研究所マネージャー
試作品を手にする、タイガー魔法瓶の小野昌之ソリューショングループ食生活みらい研究所マネージャー

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