ヤマハは2013年7月に立ち上げたデザイン思考推進プロジェクトを、ビジネスプランの社内公募制度に吸収させる形で解消した。デザイン思考を草の根で学んだ社員たちが各部門に散らばり、ヤマハの社内にデザイン思考を根付かせている。

 ヤマハは2013年7月に立ち上げたデザイン思考推進プロジェクト「Startーup Sketching(SS)」を、15年4月からスタートしたビジネスプランの社内公募制度「Value Amplifier(VA)」に吸収させた。ヤマハの場合、デザイン思考を課題解決に向けた手法として評価している。「しかし課題解決型の商品より、生活をより楽しくする新しい商品を提供したいため、課題解決の手法を学ぶSSから当社らしい商品を生み出すのは難しかった」とブランド戦略本部マーケティング統括部UX戦略部UX企画グループの畑紀行リーダーは言う。商品の開発には、課題解決の手法だけでなく、「こんな世界を実現したいという強いビジョンも必要になる」(畑リーダー)。

 VAは実現したい世界を持つ企業内起業家のプランを育てて世に届ける仕組みだ。求められる人材は、ビジョンを持ち、新しい価値を創造するマインドセットとスキルセットを持っている社員だ。

 マインドセットで求めたのは、実現したい強いビジョンの他、固定観念を疑える勇気、常により良い方向を選択できる素直さ、最後まで進められる突破力、仲間をつくれる協調性、アイデアを練り上げられる能力を持っていること。デザイン思考はスキルセットの中の手法の1つという位置付けだ。

 VAのプロセスは、まず提案者が自分の業務リソースを20%使うことを条件にエントリー。仮説を検証するなどブラッシュアップして最初の選考会に臨む。採用されると、100万円の予算で6カ月かけて顧客に提供する価値や問題解決方法をさらに検証。そして、さらに半年後に選考会があり、突破すると900万円の予算で10カ月以内にプロトタイプの開発およびテスト、ビジネス検証を行い、事業化するかどうかの最終審査を受ける。「各選考会に向けた検証過程などで、SSで培ったデザイン思考の手法が役立っている」(畑リーダー)。

 最初の選考会は半年ごとに行われ最大5件を採択。次の選考会では5件のうち最大2件が通り、事業化審査まで進む。これまでに計438件の応募があり、最初の選考会に採択されたものは39件、うち2つ目の選考会に進んだものは8件という。

社内の提案制度とデザイン思考を組み合わせることで新規事業が進みやすくなる
社内の提案制度とデザイン思考を組み合わせることで新規事業が進みやすくなる
デザイン思考だけでは、新しい商品は開発できないという認識があった
ヤマハのアイデアの育て方の流れ。その背景には、アイデアはビジョンを実現するための手段の1つであり、ビジョンにこだわり手段にこだわらないという考え方がある。社内で好き嫌いの判断はしない。創るのは新商品ではなく新事業という3つの思想が流れている(ヤマハの資料より)
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採用基準は、世界初や世界一と言える新しい価値があること。一発屋でなく事業を拡大していけること。年間売上高10億円以上になる図を描けること。いきなり何百億円投資するものでないことの4点
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