サブスクリプションの急速な成長が続く一方、消費者の間には「サブスク疲れ」「サブスク断捨離」も広がり始めた。「穴の空いたバケツに水を入れ続ける」状況を脱し、サブスク事業の存続、成長を実現する「顧客ライフサイクル管理」を3回にわたり解説する。
サブスク間競争の激化とサブスク疲れ
サブスクリプションが一躍注目を浴びるようになったのは、2015~16年に定額制のデジタルミュージックやビデオのサービスが日本で始まったのがきっかけです。「サブスクリプション基礎講座」の連載第1回の導入部分には「サブスクリプションサービスの急速な拡大が続いています」と書きました。その後もデジタル領域だけでなく、サービスやモノのサブスクリプションが増え続けています。Google Trendsによるキーワード「サブスクリプション」の検索数を示したチャートは下記の通りです。
大企業だけでなくスタートアップも次々と参入し、BtoCでは衣食住楽の分野、BtoBではSaasやIoTの分野などを中心に次々と登場し、注目を浴びています。サブスク利用者や経営者のお話を聞いて、最近「これはいい!」と思ったサービスをいくつか挙げると、Hostel Life、airRoom、ハナノヒなどがあります。
Hostel Lifeは18年11月にLITTLE JAPAN(東京・台東)が開始した月1万5000円(税別、以下同)からの月額ホステル泊まり放題サービス。宿泊施設は札幌から屋久島まで全国に13カ所あります。Elaly(東京・中央)が運営するairRoomは、月々500円から配送組み立て無料で利用できる家具の月額制レンタルサービス。家具の仕入れに企業の遊休在庫を活用するというビジネスモデルも秀逸で、19年7月に総額約1億円の資金調達を実施しました。ハナノヒは19年6月に日比谷花壇(東京・港)がスタートした、月額定額制で季節の花を楽しめるサービス。月額1187円のプランでは、毎日1本「本日の花」を店頭で受け取れます。
一方で、サブスクリプションサービス間の競争もますます激しくなっています。当初は「サブスク」というだけで注目を浴びたサービスもありましたが、もはやサブスクは珍しくありません。顧客は「サブスクだから使ってくれる」わけではなくなっています。加入しているサブスクリプションの数がいつのまにか増えてお金も時間もとられてしまう「サブスク疲れ」という言葉もしばしば聞くようになりました。
サブスクの財布内シェア争いを勝ち抜く
ここで注目すべきは、特定業界内の競争の側面(例えば定額制ビデオサービスの主要企業間の競争)だけではありません。広くサブスクリプションサービスの「財布内シェア(Share of Wallet, SOW)争い」が表面化しているのです。文字通り「顧客のお財布の中での自社サービスのシェア」という意味です。下記のチャートは、月々のサブスクリプション支払額の調査結果です。
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