軒先でアウトドア気分を味わえる

 小林氏が自信を見せるのは、三井不レジが、スノーピークと協業した他の物件ですでに大きな成果を上げているからだ。

 東京・立川に17 年3 月に竣工した「パークホームズ立川」は、JR 立川駅から徒歩で18 分ほどの場所の郊外にあり、地上12 階、総戸数352 、敷地面積は約1万4000平方メートルの大型マンションだ。販売時の最多価格帯は4000 万円台で、パークタワー晴海よりは購入しやすい価格に設定していた。

 同物件の目玉は、1 階住戸の居室と庭の中間に「半ソト空間」というスペースを設けた点にある。1 階の15 室には、自宅でのアウトドア体験を楽しめるように、価格にして数十万円相当のスノーピーク製品をセットにして販売。居住者が、この空間にスノーピーク製のシェードを張り、テーブルやチェアを置けるようにした。いわば、軒先でアウトドア気分を味わえるという提案だ。ここで、太陽の光を浴びながら朝食を食べてもいいし、家族で寝転がってもいい。使い方は自由だ。

パークホームズ立川の半ソト空間。1階住戸の庭と室内の中間に設けられたスペースにキャンプ用品を置き、アウトドア気分を手軽に味わえる
パークホームズ立川の半ソト空間。1階住戸の庭と室内の中間に設けられたスペースにキャンプ用品を置き、アウトドア気分を手軽に味わえる
スノーピークがパークホームズ立川用に開発したオリジナルシェード。このシェードに改良を加え、住宅の庭などで使う商品として2018年11月に一般販売した
スノーピークがパークホームズ立川用に開発したオリジナルシェード。このシェードに改良を加え、住宅の庭などで使う商品として2018年11月に一般販売した

 スノーピークは、同マンションの共用備品としてキャンプ用品を提供する。さらに、オリジナルのシェードを開発し、そのシェードを固定するための金具の設置を提案するなど、半ソト空間をプロデュースした。

 スノーピークのブランドと提案力をフルに活用したこの提案に、マンションのターゲットである子育て世代は敏感に反応した。マンションの1 階は、セキュリティーへの不安や眺望の悪さから、上層階よりも安い価格を設定することが多い。「最上階と1 階で大きな価格差を付けることもある」(小林氏)。それでも1 階の部屋は売れ残ることもある。しかし、パークホームズ立川では、「1 階の部屋に最上階と同じ程度の価格を設定したにもかかわらず、1 階から先に売れていった。これほどの訴求力があるとは予想していなかった」と小林氏は語る。

 マンション開発に参加することによって、スノーピークにはマンションの居住者に自社製品を訴求できるメリットがある。パークホームズ立川の場合、屋外の共用スペース「オープンパーク」がある。ここで、同社直営の「スノーピーク昭島アウトドアヴィレッジ」からスタッフが出向き、季節ごとにダッチオーブンを使った調理や屋外でのピザの焼き方、テントの張り方などの教室を開催してきた。同社営業本部東日本事業創造部シニアマネージャーの吉野真紀夫氏は「こうした活動がきっかけとなり、マンションの住民がショップに足を運ぶケースが増えた」と語る。

地域の工務店と提携拡大

 スノーピークは住宅関連の事業をアーバンアウトドア事業と称して、ここ数年積極的に展開してきた。同事業では、大手住宅メーカーとの協業の他に、地域の工務店との提携を重点施策に位置付けている。

 提携工務店は、それぞれの店舗にスノーピーク製品を販売する特約店を設ける他、アウトドアの要素を取り入れた新しいスタイルの住宅を提案する。現在までに16 の工務店と提携。2020 年までに、これを30 に増やす計画だ。工務店との提携によって、直営店やスポーツ用品量販店ではカバーできなかったエリアにも地元に密着した販売チャネルを張り巡らすことができる。こうした工務店の情報を自社の30 万人いる会員に告知することで、会員は同社が運営するキャンプ場からの帰りなどに、最寄りの特約店に立ち寄って、商品を購入できるようになる。

 さらに、スノーピークの製品に触れたことがないキャンプ初心者が、工務店の住宅提案を通して、新規のスノーピークユーザーになる可能性も広がる。吉野氏は「工務店にはインテリアコーディネーターがいて、アウトドア用品を直営店とは違った切り口で陳列・販売してくれるので、新規ユーザーの開拓を期待できる。特約店を47都道府県に早い段階で展開したい」と語る。