※日経トレンディ 2019年1月号の記事を再構成
売れている本イコール「読むべき本」とは限らない。2018年に話題になったヒット本のうち、実際に読んだ人が周囲に薦めたいと思ったビジネス書は何か。特集の第3回は社会人1000人と日経クロストレンドのコメンテーターにアンケート調査を実施し、本当に読む価値のある本をランキング化した。
激戦を勝ち抜き1位にランクインしたのは、『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』。書店で平積みになっているのを目にした人も多いだろう。歴史から文学、科学、哲学、宗教まで、教養を高めるうえで役立つ知識を365日分収録した本だ。1日1ページずつ読むだけで、1年後には教養が手軽にバランスよく身に付くと高評価で、ビジネスパーソンの支持を多く集めた。
【1位】1日1ページで教養が身に付く。曜日ごとに7分野の知識を収録
『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』
デイヴィッド・S・キダー、ノア・D・オッペンハイム、小林朋則(訳)/文響社
税込み2570円
教養を高める知識を1日1ページ、365日分収録。月曜は歴史、火曜は文学、水曜は芸術など、曜日別に7分野の知的好奇心を刺激する情報を掲載。読破すると、歴史から宗教までバランスよく教養が身に付く。

リブロプラス 商品部 BOOKグループ BOOKチーム チーム長
「人生100年時代に、興味関心の幅を広げるべく、教養をバランスよく身に付けたいとのニーズは高い。書店でも非常に動きが良かった1冊」

エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役、ビジネス書評家
「内容は西洋目線の教養が中心で、ビジネスシーンで西洋のエリートと会話をする際に不可欠な知識ばかり。旅行や海外出張前に読むのもいい」
主にプロ仕事人からの評価が高かったのが、2位の『amazon』。元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏が記した本で、巨大帝国アマゾンの経営戦略を多角的に解説している。「アマゾンを知ることは、最新の経営やビジネスを学ぶうえで非常に効率のいい学習機会となる。自分が利用しているサービスの背景にある戦略を知ることで、なるほどと実感しやすい点も魅力だ」(favy代表取締役社長の高梨功氏)。
【2位】収益構造からAI技術まで。アマゾンに学ぶ最新経営術
『amazon 世界最先端の戦略がわかる』
成毛眞/ダイヤモンド社
税込み1836円
著者は元マイクロソフト日本法人社長。キャッシュフローの仕組みからテクノロジーまで、爆発的に拡大する「巨大帝国」アマゾンの経営戦略をひもときながら、最新の経営やビジネス感覚とは何かを解説する。

マクアケ代表取締役社長
「“アマゾン生態系”のポテンシャルや、日本企業には見られない斬新なキャッシュフローの考え方などが多角的に整理されていて読み応えがある」

favy代表取締役社長
「アマゾンを知ることは、最新ビジネスを効率よく学ぶことにつながる。自分が利用しているサービスだからこそ、戦略を実感とともに学べる」
最新テクノロジーを生かしたビジネスで強大化する海外勢を分析した本は他にもある。7位にランクインした『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』がそれだ。GAFAとは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンを総称する造語。これら4社を通じて、人類の未来と生き方の指針が見えてくる1冊だ。
ビジネストレンドを知るうえでは、4位の『サブスクリプション』も外せない。所有からシェア、利用へと消費者のニーズが変化する中、サブスクリプションビジネスの支援で世界をリードする米Zuoraの創業者兼CEOが、継続課金ビジネスの全貌を明かしている。「ヒット商品を生んで稼ぐ時代は終わった。シェアサービスが拡大する中、個人的には今読むべきビジネス本ナンバーワンに推したい」(エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役の土井英司氏)。
マネー関連の書籍も複数ランクインした。共通するのは、著名な文筆家や投資家、経営者が、お金を軸に働き方や生き方を語った自己啓発本である点。例えば3位の『年収1億円になる人の習慣』。著者は、美容室「EARTH」を運営するアースホールディングス取締役。自身の経験などを交えながら、「早起きをする」「質よりスピードを重視する」など、仕事、生活、学びなど5つのジャンル別に、年収1億円への36の習慣を紹介している。
【3位】年収180万円から“億超え”へ。誰でもできる36の習慣を伝授
『年収1億円になる人の習慣』
山下誠司/ダイヤモンド社
税込み1620円
著者は国内店舗数240を誇る美容室「EARTH」を運営するアースホールディングス取締役。19歳で美容師になり、年収180万円の時代を経て31歳で年収が1億円を超えたという経歴の持ち主だ。自身を含む年収1億円超の人の経験を基に、「目的以外のことには1円のお金も使わない」「質よりスピードを重視する」など、仕事、生活、学びなど5つのジャンル別に「年収1億円への習慣」を紹介。
【4位】「継続課金ビジネス」とは何か。具体事例も豊富な導入ガイド本
『サブスクリプション 「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル』
ティエン・ツォ、ゲイブ・ワイザート、桑野順一郎(監訳)、御立英史(訳)/ダイヤモンド社
税込み1944円
「所有」から「利用」へと消費者ニーズが変化する中、従来の販売モデルでは成長が難しい──。サブスクリプションビジネスの支援で世界をリードするSaaSプロバイダー Zuoraの創業者兼CEOが初めて明かす、継続課金ビジネスの全貌と導入ガイド。
【5位】孫正義氏も認めたプレゼン達人の右脳と左脳に働きかける伝え方
『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』
伊藤羊一/SBクリエイティブ
税込み1512円
著者はヤフー・アカデミア学長で、年間300人以上にプレゼンを指導。「1分で伝える」を軸に、右脳と左脳に働きかける独自の手法を紹介。会議やプレゼン、上司への提案、取引先との商談などシーン別のハウツーもあり実用性が高い。
【6位】後継者不足に悩む中小企業の社長を目指す「資産形成術」
『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門』
三戸政和/講談社
税込み907円
後継者不足に悩む中小企業の増加が社会問題化する中、「マネジメント経験があるなら、会社を買って社長を目指せ」と説く。役員報酬を得た後、企業を売却して利益を得る「雇われる人生から脱却し資本家になる」生き方を提案。
【7位】グーグル、アップル、FB、アマゾン。強大化する4社を多角的に分析
『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』
スコット・ギャロウェイ、渡会圭子(訳)/東洋経済新報社
税込み1944円
グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン=「GAFA」。四騎士はなぜ、これほど強大になったのか。世界の何をどう創り替えたのか。次なるGAFAは到来するのか──。4社を通じて、人類の未来と生き方の指針が見えてくる。
蔦屋家電エンタープライズ 商品企画部 商品調達Unit
「現在の世界の仕組みを知るうえで、GAFAを語らずにはいられなくなっている。4大企業の基礎知識を習得するための入門書に最適」
14位の『いま君に伝えたいお金の話』は、投資家・村上世彰氏がお金に対する考え方を公開した本。子供向けに書かれた本だが、「リスクとリターンの考え方」「お金と向き合うための覚悟」など、大人が読んでも学びが多い。
今旬のビジネス本こそ、読むタイミングが重要。識者のコメントなどを参考に書籍を選び、複数冊を読破しよう。仕事や人生に役立つこと間違いない。
【8位】人気YouTuberの高校教師によるストーリーで学べる世界史の教科書
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』
山﨑圭一/SBクリエイティブ
税込み1620円
著者は公立高校教師でYouTuberの「ムンディ先生」こと山﨑圭一氏。一般的な教科書と違い、あえて年号を使わず、主語となる地域や国家、王朝などをできるだけ変えずに「1つのストーリー」として解説。記憶に残りやすい構成が特徴で、世界史を学び直したい社会人にも最適。
【9位】10年以上前のヒット本をリメーク。時間やお金に余裕が生まれるコツ満載
『やりたいことを全部やる!時間術』
臼井由妃/日本経済新聞出版社
税込み864円
06年に発売された『1週間は金曜日から始めなさい』(かんき出版)の再編集版。時間管理術にたけた著者が実践している、仕事と私生活の時間管理のコツをまとめた。「考えるのは15分でやめる」「会議は1発言1分で」など、精神面や経済面にも余裕が生まれる方法を豊富に収録。
TSUTAYA BOOK STORE 五反田店書店員
「10年以上前のヒット本を文庫化。60ページ以上にわたり加筆・修正し、働き方改革時代に合う内容にした点が新しい」
【9位】偏差値35から東大に合格した大学生の本を能動的に読み地頭を鍛える方法
『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』
西岡壱誠/東洋経済新報社
税込み1512円
「東大生なら当たり前に知っている」本を能動的に読む力と、得た知識を使って地頭を鍛える力が同時に身に付く方法をまとめた1冊。PART1では、読解力から応用力まで5つの力を磨く具体的な方法をステップ形式で紹介。PART2では読むべき本の探し方を伝授する。
【9位】すべての社会人が身に付けたい気配りの要素と実践ワザを解説
『できる人は必ず持っている 一流の気くばり力』
安田正/三笠書房
税込み1512円
ベストセラー『超一流の雑談力』(文響社)著者の最新作。「気くばり」こそすべての仕事の土台になると説く。俯瞰(ふかん)する、共感する、論理を通すなど気配りの5つの要素を解説し、気配りの“感度”と実践力を高めるコツを紹介。
【12位】糸井重里氏へのインタビューで解き明かす「ほぼ日」の強さの秘密
『すいません、ほぼ日の経営。』
川島蓉子(聞き手)、糸井重里(語り手)/日経BP社
税込み1620円
「ほぼ日」のこれまでと目指す先について、ジャーナリストの川島蓉子氏が社長・糸井重里氏にインタビュー。同社の事業や人に対する考え方や、魅力的なコンテンツや商品を次々に生み出せる理由が見えてくる。
ソニー・ミュージックレーベルズ EPICレコードジャパン 部長
「自分の経験上、いいチームが組めたときにヒットが出る確率も高くなる。糸井さん流の強いチームのつくり方が非常に参考になる」
【13位】USJをV字回復に導いたマーケターの提案を通し組織を動かす具体的手法
『マーケティングとは「組織革命」である。 個人も会社も劇的に成長する森岡メソッド』
森岡毅/日経BP社
税込み1728円
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンV字回復の立役者が教える「社内マーケ」術。個を生かす組織をつくるには、どんな仕組みを整えるべきか。周囲を変えるのに不可欠な「提案を通すスキル」を磨くには──。人と組織の本質が分かる。
OFFICE MASA代表、吉野家 戦略担当顧問
「『お客様の心を動かすのがマーケターであるならば、社内の人間くらい動かせるべき』というサラリーマンの痛いところを突く良書」
【14位】お金、仕事、人間関係、決断の方法…。人生で大切なことを学べる小説
『大富豪からの手紙』
本田健/ダイヤモンド社
税込み1728円
大学2年生の主人公、佐藤敬の元に大富豪だった祖父から届いた「9つの手紙」。1通ずつ読み進めながら、敬は人生で大切なものを学ぶ旅に出る。お金、仕事、人間関係との向き合い方や決断の仕方をストーリー仕立てで学べる。
【14位】投資家・村上世彰氏が初公開した「お金に支配されない生き方」
『いま君に伝えたいお金の話』
村上世彰/幻冬舎
税込み1296円
お金とは何か。どうすれば手に入るのか。お金を増やすための基本ルールとは。投資家・村上世彰氏が複数の学校で行った「お金の授業」の内容を基に、お金に対する考え方を公開。子供向けに書かれた本だが、「リスクとリターンの考え方」など、大人が読んでも学びが多い。
【16位】音楽家や帽子デザイナーなど多彩なイノベーターが手法を語る
『CREATIVE SUPERPOWERS』
ローラ・ジョーダン・バーンバック他、河尻亨一(訳)/左右社
税込み2484円
「つくる力」「ハックする力」「学ぶ力」「パクる力」を、現代のビジネス課題解決に必要な新しい力と定義。これら4つを活用しながら世界各国で課題に向き合うイノベーターたちが、その具体的な発想と手法を語った1冊。
エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役、ビジネス書評家
「クリエーティブ魂に火がつく1冊。ものづくりには愛と尊敬の念が不可欠で、尊敬できないリーダーは人を動かせないと改めて実感」
【17位】消える仕事と増える仕事を提示。AI全盛時代の生き方・働き方を指南
『10年後の仕事図鑑 新たに始まる世界で、君はどう生きるか』
堀江貴文、落合陽一/SBクリエイティブ
税込み1512円
AIに仕事が奪われる現実を見据えて約50の職種の未来をイラスト入りで分析し、消える職業と生まれる職業などを具体的に提示。会社やお金に対する価値観の変化も説明する。激動の時代を力強く生き抜くための指南書。
【18位】メディアアーティストの著者による日本を再興するための方法論
『日本再興戦略』
落合陽一/幻冬舎
税込み1512円
テクノロジーの進化や人口減少、超高齢化社会の到来などに、日本と日本人はどう立ち向かえばいいのか。技術革新や政治、教育、仕事などの切り口から、世界の中で日本を再興するために必要な戦略を説く。
C Channel代表取締役社長
「日本の課題や未来を分かりやすく示した本。教育や仕事においては個人で考え行動する機会を創出すべきなど、戦略が具体的で共感できる」
注)調査は18年11月初旬に実施。ビジネス書評家の土井英司氏監修の下、18年に刊行されたビジネス関連書籍を50冊選定。マクロミルでビジネスパーソン1030人に「読んだ本の中で、他人に薦めたい本」を調査した結果と、「日経クロストレンド」のアドバイザリーボードに聞いた結果をランキング化した