※日経トレンディ 2019年1月号の記事を再構成
スマートスピーカーが登場し、家電を音声で簡単に操作できる時代になった。しかし、音声操作はあっという間に時代遅れになるかもしれない。特集の第8回は「住宅」の今後について。数年たてば、ユーザーの行動をAI(人工知能)が学習し、家電が自動的に動く“先読みスマートホーム”が一般的になりそうだ。
米国のBrain of Thingsが開発した「CASPAR(キャスパー)」は、全ての部屋にセンサーを配置し、住人の行動をAIに学習させるシステム。例えば、起床時に「カーテンを開けて照明をつける」ことを繰り返していると、やがて起きただけでカーテンが開き、照明がつくようになる。現状、国内で対応しているのはカーテンや照明など。2019年末には顔認証機能でテレビの前にいる人を識別して、好みの番組を最初に映す機能を追加する。“未来の家”では、あらゆる家電や設備がAIの命令で動くようになるだろう。
自動化機能は、国内の家電メーカーも開発中だ。パナソニックは、「ユーザーの行動を先読みして家電が動くと不快に思う人もいる」(パナソニック)といった理由から、スマートホーム側から住人に用途を提案する機能に力を入れる。18年に開発発表した「Home X」では、例えば子供が泥だらけで帰ってきたことを家族の会話から判断して、「洗濯機の温水洗浄機能を使ってはどうですか」といった提案をする。
スマートホームで使えるIoT家電は、今後さらに充実する。パナソニックは、21年までに全家電をAI化すると発表。米Amazonやシャープは、IoT家電を簡単に開発できる部品(モジュール)を他社に提供開始した。LIXILなどの住宅設備メーカーも、スマートホーム対応に力を入れている。
また、スマートホームで家の鍵が電子錠になると、「留守宅」が一変する。特に、留守中に家事代行などのサービスが使えるのは有用だ。ソニーネットワークコミュニケーションズの「MANOMA」では、契約済みの家事代行業者が家に着いたときに、その時だけ玄関を遠隔で解錠できるシステムを導入する。これが実現すれば、「外出先から帰る頃には、買い物も掃除も終わっている」といった、効率的な生活が可能になる。自宅の鍵を家事代行業者に預けるのは抵抗がある人でも、このシステムなら利用しやすい。
家事の省力化では、調理の自動化を目指すスマートキッチンへの期待も大きい。クックパッドは18年に、レシピを読み込んで動く自動調理家電の共通規格「OiCy」を発表。21年には、料理のほとんどをOiCy対応家電に任せられる時代になる。カットマシンで材料を切り、下味マシンで味を付け、センサー付きフライパンに載せれば、あとは待つだけで料理が完成するイメージだ。26年には、人がほとんど関わらなくても調理できる、夢の「全自動化」が実現するはずだ。
スマートホームの潮流は完全自動化へ
スマートホーム(またはスマートハウス)という概念は20年以上前に提唱されており、かつては盗難防止や見守りなどのセキュリティー面や省エネがメリットといわれていた。最近では、ネットワークにつながった家電などをスマホや音声で操作できる機能も加わり、照明やエアコン、カーテンなどさまざまな機器をまとめて動かせる住宅も多い。さらに将来は、人が操作をしなくても、家のAIが住人に家電の利用を提案したり、行動を先回りして自動的に動作したりする時代になる。
(写真/PIXTA)
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