※日経トレンディ 2019年1月号の記事を再構成

東京駅前に摩天楼が連なる。東京メトロの新駅「虎ノ門ヒルズ駅」周辺が超高層ビル街に変貌し、JR山手線「高輪ゲートウェイ駅」誕生で、東京の新たな玄関口が整備される。大阪では最後の一等地“うめきた”が動き出す──。特集の第6回は「施設」。ダイナミックに変わる日本の姿を先取りした。

20年代に超高層ビル街が続々誕生

 「TOKYO 2020」は序章にすぎない。東京の再開発は、むしろ東京五輪後に本格化する。高さ200メートルを超えるビルが次々と産声を上げ、天を突くように林立するのだ。

 日本一高いビルといえば、大阪のあべのハルカス。14年3月に開業し、300メートルの高さを誇る。しかし、日本一の座は長く続かない。23年3月、森ビルなどが虎ノ門・麻布台地区に高さ323メートルのビルを完成させ、日本記録を更新。27年度にはその記録を三菱地所の「東京駅前常盤橋プロジェクト」がさらに塗り替え、東京駅日本橋口前に高さ390メートルのビルが威容を示す。あべのハルカス誕生から10年余り、日本のビル建築は「400メートル時代」に迫り、ついに東京タワー(333メートル)を抜き去る。

 東京駅周辺は大規模計画であふれている。今まさに建設ラッシュが始まろうとしているのが、東京駅前の八重洲だ。整然としたビル群が立ち並ぶ丸の内側とは対照的に、雑居ビルが多く残るこの場所に、日本橋再生計画で実績を積んだ三井不動産が参入。東京建物など他の不動産大手も足並みをそろえ、25年度までに240~250メートルのビルが3棟建つ見通しとなった。3棟のうち中央棟(八重洲二丁目北地区)の上層階には、ブルガリホテルが日本初進出する。圧巻の“駅前トリプル摩天楼”が東京駅周辺の風景を一変させるのは間違いない。

 八重洲から目と鼻の先に広がる日本橋エリアは、再開発の第2ステージに突入した。18年秋、日本橋高島屋に新館がオープンし、日本橋三越本店もリニューアル第1弾を完了。三井不動産は19年秋、日本橋室町に「コレド室町テラス」を開業し、台湾の進化系書店「誠品生活」が日本初上陸する。

 2000年代は点にすぎなかった日本橋の再開発にこうした面的な広がりが生まれ、浮かんでは消えてきた構想が動き出した。日本橋川を覆う首都高速道路を地下に移設し、青空を取り戻す試みだ。財源負担の課題はあるにせよ、この首都高地下化をにらみ、川沿いの5区画が新たに再開発区画に決まった。このうち日本橋一丁目中地区では、三井不動産と野村不動産が25年度にも高さ287メートルのビルを建設。上層階には国際的なホテルブランドを誘致する計画を描く。丸の内・大手町から八重洲・京橋・日本橋まで、東京駅徒歩圏内が世界屈指の超高層都市になる。

 空に向かって街が広がるのは、虎ノ門も同じだ。森ビルが東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」との一体開発を掲げ、19年度から22年度にかけてビジネスタワー、レジデンシャルタワー、ステーションタワー(いずれも仮称)と「虎ノ門ヒルズ」を冠した3棟を新築。既存の虎ノ門ヒルズ 森タワーを加え、区域面積7.5ヘクタール、延べ床面積80万平方メートルの一大ビジネス街が生まれる。森ビルは六本木寄りに広がる虎ノ門・麻布台地区の再開発にも参画し、先述の高さ323メートルのビルに加えて、200メートルを超す住宅棟を2棟建設する。

 中央区と江東区のベイエリアでは、既に多数のクレーンが四方八方に行き交っている。豊洲駅前には、三井不動産がホテルや商業施設、オフィスを併設した「豊洲ベイサイドクロス」を20年にも開業。有明では住友不動産が音頭を取り、10.7ヘクタールに及ぶ再開発が進む。東京五輪の選手村が置かれる晴海には五輪後、5632戸、約1万2000人もの街「HARUMI FLAG」が生まれる。これらのベイエリアを含め、東京23区の東側「イースト東京」へは、今後も人口流入が続きそうだ。

 港区のベイエリアも見上げんばかりのビル群が連なることになる。浜松町では、世界貿易センタービルや東京モノレール浜松町駅が建て替わる。竹芝地区では、JR東日本が「ウォーターフロント開発計画」を推進中。劇団四季の新劇場を核に、ホテルやオフィス、商業施設を展開する。東急不動産と鹿島建設も共同事業会社「アルベログランデ」を立ち上げ、竹芝駅前に「竹芝新八景」を含む個性的なビル街をつくり上げる。JR山手線田町―品川間には、49年ぶりの新駅「高輪ゲートウェイ駅」が20年に開業。新駅周辺では、JR東日本が街づくりに乗り出す。

 渋谷駅の真上には19年秋、屋上展望施設を備えた「渋谷スクランブルスクエア」東棟がオープンする。富士山まで見渡せる360度のパノラマビューが、東京の新名所として名乗りを上げる。

 都心から湾岸まであまねく広がる再開発の波。その先に一段と磁力を増した「世界のTOKYO」が待っている。

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