※日経トレンディ 2019年1月号の記事を再構成

特集の第4回は「交通」が変える未来を描く。2027年、日本の鉄道路線図、いや日本地図そのものが大きく塗り替わる。研究開発を始めてから60年以上を経て、ついに“夢の超特急”「超電導リニア」が乗客を乗せて走り出す。

2027年開業予定のリニア中央新幹線。品川ー名古屋間が僅か40分で結ばれる
2027年開業予定のリニア中央新幹線。品川ー名古屋間が僅か40分で結ばれる

 開業する「リニア中央新幹線」は最高時速が500kmに達し、品川―名古屋間が僅か40分で結ばれる。所要時間だけを見れば両都市が通勤可能なエリア内となり、首都圏・中京圏といったくくりが過去のものになる可能性すらある。

 さらにその10年後には、名古屋から大阪まで延伸され、東京―大阪間が67分に短縮される予定。東名阪が一体となった巨大経済圏が出現する。

 料金は全くの白紙だが、JR東海が10年に公表した収支計画の試算では、東海道新幹線の現行料金と比べると東京―名古屋間で700円、東京―大阪間で1000円のアップにとどまる。これならば、新幹線と同様に気軽に利用できそうだ。

 一方、既存の鉄道と比べると乗り方は大きく変わる。インターネット予約が前提となり、駅から切符売り場が消滅。山梨県にある実験線ではまるで空港のようなボーディングブリッジが使われており、ホームがなくなる可能性もある。ちなみに大半の区間がトンネルで、車窓は期待できない。

 では、これまでビジネスパーソンの足となってきた東海道新幹線はどうなるのだろうか。JR東海によると、「のぞみ」中心のダイヤから「ひかり・こだま」中心のダイヤに変わるという。これまで通過する列車が多かった静岡県などへ行きやすくなり、観光路線へと変貌するだろう。輸送力を高めるために廃止されてしまった食堂車や個室の復活など、乗って楽しい列車に大きくかじを切る可能性もあり得る。

 新幹線を上回るスピードの超電導リニアが実用化されても、新幹線の高速化への取り組みは続く。19年にJR東日本が試験運転を始める「ALFA-X」は、時速360㎞での営業運転を目標にするという。実は、速度を上げるだけなら技術的には難しくはない。課題は地震発生時など非常時にいかに素早く止めるかだ。そこで試験車両では、屋根上に飛び出る空力抵抗板を付けたり、レールに吸い付く電磁石を付けたりして、停止時間の短縮を狙う。

 JR東日本が速度向上を目指す背景にあるのが、31年に予定されている北海道新幹線の札幌までの延伸だ。現状の最高時速320kmのままだと東京―札幌間は5時間を要し、空路との勝負に勝てない。しかし4時間台になれば、エアラインが圧倒する同区間にくさびを打つことができるかもしれない。特に羽田空港へのアクセスが良好とはいえない大宮(さいたま市)以北なら、新幹線を使うメリットが出てくるだろう。

 首都圏では鉄道の沿線間競争が激化。そこに殴り込みをかけるのが相模鉄道(相鉄)だ。これまでは神奈川県内を走るだけだったが、20年春にはJR線への直通運転を開始。東海道貨物線を経由して新宿、池袋など都心に乗り入れる。さらに23年には新横浜を経て東急東横線・目黒線につながる新ルートも開業し、その先の地下鉄線にも乗り入れる見込み。通勤事情が大きく変わる。

 また、混雑が激しいJR中央快速線には2階建てグリーン車がお目見えし、追加料金を支払えば座ってゆったりと通勤できるようになる。

 関西圏では、大阪のキタから関西空港へのアクセスが大幅に改善される。まず23年に「北梅田駅(仮称)」が開業して、JRの特急「はるか」が停車。さらに31年には大阪中心部を南北に貫く「なにわ筋線」が開通し、JRだけでなくライバルの南海電鉄の特急もそろって北梅田に乗り入れる予定だ。

 このように大都市では新路線のプロジェクトが続く一方、人口減が続く地方部では公共交通機関の維持が難しくなっている。複数の移動手段をシームレスに組み合わせて一体のサービスのように使う「MaaS(Mobility as a Service)」の考え方で、マイカーなしでも生活できる仕組みを構築する動きが加速しそうだ。

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