※日経トレンディ 2019年1月号の記事を再構成
2018年1月、米国でオープンしたレジなしAI(人工知能)コンビニ「Amazon Go」は21年までに最大3000店舗を展開する予定だ。ネット通販の攻勢が強まり、岐路に立つリアル店舗だが、店舗の“デジタル化”にかじを切ることで逆襲に出る。特集の第3回は「流通」の未来を予測する。

実際にリアル店舗はどう変わるのか。ローソンが提示する未来のコンビニで導入される技術は大きく分けて3つ。電波を用いて非接触で商品情報を記録、管理する「RFIDタグ」、スマホやRFIDタグを使った「レジレス決済」、価格の変更が簡単にできる「電子値札」だ。これらが合わさることで、ECに侵食されつつあるリアル店舗の“逆襲の号砲”にもなる。
ターニングポイントは25年。17年に経済産業省とコンビニ5社によって打ち出された「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」により、コンビニの全商品にRFIDタグが付く。タグの単価が1円まで安くなり、電子値札と連動すれば、リアルタイムに店頭価格が変動する「ダイナミックプライシング」を各企業が導入する土壌が整う。AIが常時ネット通販の価格をチェックし、RFIDタグから得られる在庫や賞味期限情報なども考慮した機動的な値付けシステムが始まれば、リアル店舗の価格競争力は一気に高まる。
リアル店舗の進化はまだある。未来のコンビニは各種センサーを備え、膨大なマーケティングデータが蓄積される。これらのデータを活用した“需給予測”もAIの得意分野。購買を促す最適な値付けをリアルタイムで行えるようになるだろう。
デジタルサイネージを活用した、店舗の“メディア化”も起こる。例えば、客が商品を手に取ると、該当商品の購買意欲を高める情報がサイネージに表示される。ネット通販で行われている、個々人の嗜好に合わせて商品提案する「レコメンド機能」がリアル店舗に“逆輸入”されるのだ。
すでに、福岡を中心にスーパーを展開するトライアルは、約700台のカメラを備えた次世代型店舗をオープン。「店舗での買い物の80%は非計画な購買と見込む。ユーザー個々のニーズを捉えた商品を提案できれば売り上げアップになる」(トライアル)と語る。
宅配ロボットを使い、コンビニ周辺の買い物難民を救う試みもある。「CarriRo Delivery」はコンビニのデリバリーを自動化する。近年、コンビニは配送網と拠点数の充実を生かし、デリバリー事業の拡大を目指す動きが活発化している。
日本は諸外国に比べ、労働人口の減少が課題となっているため、無人・省人化店舗のニーズが極めて高い。技術革新が進めば街中にデジタル化された小売店が出現することは間違いない。
コンビニはこう変わる!
レジレス
商品にRFIDや画像認識技術を使うことで、レジを通さず決済できる「レジレス」の開発が進む。日本では労働人口の減少による人材不足を補う技術としても注目され、コストメリットもある。

電子値札 → リアルタイム値付け
遠隔操作で価格を変更できる電子値札。リアルタイムな値付けを行うダイナミックプライシングには欠かせない技術で、大手コンビニも導入を検討。値札を付け替える手間も削減できる。

RFIDタグ
バーコードや賞味期限などの情報を書き込めるICタグ。レジレス決済にも使える。大日本印刷によると「1枚当たりの単価を25年に1円にする」という話もあり、コストが下がれば、一気に採用企業が増える。

【2025年】コンビニ全商品にタグ付け完了!
ダイナミックプライシング開始
コンビニの全商品にRFIDタグが採用されるのが25年の見込み。賞味期限情報などをAIが管理し、タイミングよく値下げするダイナミックプライシングが可能になる。
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