「3年で10万台の目標を大幅前倒しで達成」「18年11月末時点で5万店以上、18年度末までには10万店まで拡大」──QRコード決済事業者の盛大な投資合戦に伴い、周辺事業者からも景気のいい声が聞こえてくる。サービスの選択肢が多すぎることが小売店の負担になっており、そこに商機が生まれている。
QRコード決済がけん引しているキャッシュレス化の大波に乗って、まずは1つの端末でさまざまな決済手段が可能になるマルチ決済端末をリアルな小売店に提供するプレーヤーが、一気に市場拡大を図っている。複数の決済手段をまとめて代行処理し、小売店に提供するところから「ゲートウエイ(決済代行)事業者」とも呼ばれているプレーヤーだ。
先陣を切っているのは、QRコード決済に特化した新興の2社。2009年の創業時から中国のネットサービス大手、騰訊(テンセント)の日本展開をサポートし、15年からQRコード決済端末を小売店に提供してきたネットスターズ(東京・中央)と、17年3月にQRコード決済事業を分離して独立した日本ユニシス系のキャナルペイメントサービス(東京・江東)である。
ネットスターズはテンセントが提供する「微信支付(ウィーチャットペイ)」、そのライバルである中国アント・フィナンシャルサービスグループが提供する「支付宝(アリペイ)」に加え、「LINE Pay」「楽天ペイ」「d払い」「PayPay」の6ブランド、キャナルペイメントは、上記の6つに「Origami Pay」を加えた7ブランドのQRコード決済サービスと提携済み。QRコード決済に特化したマルチ決済端末だけでなく、既に店にあるタブレットやPOS(販売時点情報管理)システムがQRコード決済に対応できるよう、APIを使って決済ソリューションを提供している。
「手数料を支払ってでも、複数のQRコード決済サービスを1つの決済端末やPOSで処理したいという小売店側のニーズは、確実に存在する」とネットスターズのフィンテック事業部マーケティング部の森田徹氏は語る。
QRコード決済サービスの勝ち組がまだ定かでない中、小売店側がユーザーの希望にくまなく対応しようとすると、プリントしたQRコードを何枚も店頭に用意するか、マルチ決済が可能な端末やPOSを用意するのが現実的。ただ、小売店が複数のQRコード決済サービス事業者と別々に契約を交わせば、手数料などの条件も入金のスケジュールなども皆異なり、管理の手間が大変になる。「一定以上のユーザーの利用を見込んでいる小売店は、管理の手間が簡単なゲートウエイ事業者と契約し、マルチ決済端末の導入を検討し始める」(森田氏)というわけだ。実際、18年11月末時点で5万店以上というネットスターズの加盟小売店の数は、「18年度末までに10万店まで拡大することを見込む」(森田氏)というほど、小売店側に導入機運が高まっている。

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