現金を使わない「キャッシュレス決済」の先進地域はどこか──。日経BP社(日経クロストレンド、日経FinTech)と日本経済新聞社が全国1万人を対象にキャッシュレス決済比率を調査したところ、1位は千葉県の48.51%、茨城県の48.49%、東京都の48.44%がほぼ同率で上位トップ3となった。

キャッシュレス決済利用額比率ランキング
キャッシュレス決済利用額比率ランキング
「店頭での日々の買い物のなかで、どれくらいの金額がキャッシュレス決済ですか」と尋ね、 その比率の平均を算出し、小数点以下第2位でランキング化した
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 本調査は、ムック「QR決済」の発行に向けて実施した。この比率は、店頭での日々の買い物のなかで、どれくらいの金額がキャッシュレス決済かを尋ね、その比率の平均を算出した。国は最終消費支出に占めるキャッシュレス決済比率を2027年までに4割程度に上げることを目指している。本調査では、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど店頭での決済に絞った点で算出基準が異なる。全国平均のキャッシュレス決済比率は43.03%となった。

 なお、下位は45位が島根県33.61%、46位が宮崎県32.19%、47位が佐賀県31.94%で、東高西低のランキングとなった。

キャッシュレス決済利用額比率ランキング(6~47位)
キャッシュレス決済利用額比率ランキング(6~47位)
「店頭での日々の買い物のなかで、どれくらいの金額がキャッシュレス決済ですか」と尋ね、 その比率の平均を算出し、小数点以下第2位でランキング化した
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キャッシュレス決済利用額比率マップ
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 別の質問で、利用している決済手段を尋ねた。現金以外のキャッシュレス決済の利用種類が増える地域ほど、キャッシュレス決済額比率も高くなる傾向がある。尋ねた手段は10種類だ。

 最も利用数が多いのが東京都で1.74種類、最も低いのが宮崎県で1.04種類だった。例えば、クレジットカード利用率は宮崎県で52.0%にとどまるが、最も高い神奈川県では79.1%に上り大きな差がついた。地域差が最も目立ったのは交通系電子マネーで、東京都、神奈川県、埼玉県が利用率50%前後に対して、福井県は5.8%にとどまっている。

 最近注目が集まるQRコード決済サービスの利用意向も尋ねた。キャッシュレス決済比率とは結果が一変し、鳥取県12.4%、山形県10.1%、新潟県9.7%が上位となった。

QRコード決済利用意向ランキング
QRコード決済利用意向ランキング
「あなたは、次の決済手段を(今後も)利用したいと思いますか?」との問に対して、QRコード決済を「大変利用したい」または「まあ利用したい」と回答した比率を合計した
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QRコード決済利用意向ランキング(6~47位)
QRコード決済利用意向ランキング(6~47位)
「あなたは、次の決済手段を(今後も)利用したいと思いますか?」との問に対して、QRコード決済を「大変利用したい」または「まあ利用したい」と回答した比率を合計した
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 下図のようにキャッシュレス決済額比率(横軸)とQRコード決済利用意向(縦軸)でマッピングすると、これら3県(鳥取県、山形県、新潟県)はキャッシュレス決済比率は低いものの、QRコード決済の利用意向は高く、市場開拓の可能性が高い。

キャッシュレス決済額比率(横軸)×QRコード決済利用意向(縦軸)
キャッシュレス決済額比率(横軸)×QRコード決済利用意向(縦軸)
右上の象限はキャッシュレス決済額比率とQRコード決済利用意向が共に高いキャッシュレス先進地域、 左上の象限は現在のキャッシュレス決済額比率は低いもののQRコード決済の利用意向は高く、市場開拓の潜在価値が高い地域と言える
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 東京都や埼玉県は、キャッシュレス決済額比率もQRコード決済利用意向も相対的に高く、順調に利用が広がるとみられる。しかし、利用意向は10%に満たない都道府県が大半。QRコード決済サービスの認知や利用メリットの訴求が必要だ。

やはり10代は意識高い、利用意向あり認知度あり

 キャッシュレス決済やQRコード決済の利用傾向は、地域別だけでなく世代別にも違いが見られる。

 顕著なのが10代のQRコード決済サービス利用意向の高さだ。同世代は、4.8%が「大変利用したい」、16.4%が「まあ利用したい」と答えて約2割が利用意向を示した。4.8%(45~49歳)~7.5%(40~44歳)にとどまる他世代と大きな差がついている。また、QRコード決済サービスの認知率でも10代は33.9%と比較的浸透しているのに対し、その他の世代では14.5%(20~24歳)~21.9%(50~54歳)。

QR決済サービス世代別利用意向
QR決済サービス世代別利用意向
「大変利用したい」「利用したい」を合計した利用意向は、10代が飛び抜けて高い。棒の高さは認知率を示す
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 利用意向が高い一因と考えられるのが、現在のキャッシュレス決済の利用状況だ。10代のクレジットカード利用率は14.1%、最も高い交通系電子マネーでも17.4%にとどまる。

 10代のキャッシュレス決済手段の平均利用種類は0.66種類で20~24歳の1.10と大きな差がある。さらに、30~34歳が1.47種類、55~59歳が1.58種類と年齢が上がるごとに利用手段数が増えている。10代は自分なりのキャッシュレス決済利用法が定着していないため、QRコード決済サービスを受け入れる余地があるのだろう。

キャッシュレス決済手段の平均利用数
キャッシュレス決済手段の平均利用数
クレジットカードは30代以上でおおむね70%前後と一定だが、50代以上はプリペイドカードの利用が増えるなどで、利用する種類が増える
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意外だったシニアの現金志向の低さ

 一方で、現金についても利用意向を尋ねると意外な結果となった。

 現金を「大変利用したい」と答えた比率を世代別に比べると、10代が67.9%、20~24歳が64.7%と60%を超えるのに対して、30~34歳が52.2%、40~44歳が42.7%、50~54歳が40.6%、60歳以上が34.8%と如実に低下していく。キャッシュレスの利便性を実感するほど、支払いに手間取る現金の利用意向が下がる様子がうかがえる。

 QRコード決済サービスの利便性、独自性を打ち出せれば、上の世代にも利用が広がる可能性があるといえよう。

現金利用意向
現金利用意向
現金を「大変利用したい」と答える比率は年代が上がるにつれて顕著に減少する。シニア層はQRコード決済を受け入れる素地がある
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 ちなみに、現金を「大変利用したい」比率を全世代平均で見ると45.2%。クレジットカードの36.3%、交通系電子マネーの12.5%、流通系電子マネーの5.7%を上回りトップであり、短期間で他手段に取って代わられることは考えにくい。

 なお、利用意向の比率は各決済手段を知らない人も母数に含めた比率である。例えば、交通系電子マネーの認知度が59.5%に対して、流通系電子マネーは24.9%にとどまる。この差が利用意向の差にも反映されている。

「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2019」調査概要
  • 調査期間:2018年10月25~30日
  • 調査企画:日経BP社(日経クロストレンド、日経FinTech)、日本経済新聞社
  • 調査委託先:マクロミル
  • 調査方法:マクロミルの調査モニターを対象にしたインターネット調査。スクリーニングを主目的とした事前調査と、QRコード決済認知者を対象とした本調査の2段階で実施した。予備調査は全国47都道府県から均等に回答者を集め(212または213人)、合計で1万人から回答を得た。その上で、都道府県と年代の分布状況が日本の人口と同様になるようにウエイトバック処理をして集計した。本調査は、予備調査でQRコード決済サービスを認知している人を対象に実施。全国47都道府県から均等に回答者を集め(103人)、合計で4841人から回答を得た。予備調査と同様のウエイトバック処理を実施した。
キャッシャレス決済の今と未来が分かる!ムック「QR決済」発行
本著は、日経BPの金融専門誌「日経FinTech」や、マーケティング&イノベーション領域の専門デジタルメディア「日経クロストレンド」が総力を挙げて、QR決済の最新事情を取材。専門記者が、利用者にとってのメリット・デメリットを多面的に分析するのはもちろん、「脱現金」が進む店舗の現場や、乱立する各種サービスの戦略の違い、業界の裏側もたっぷりとご紹介します。 【Amazonで購入する】