敵の敵は味方──中国アリババ集団と組むPayPay(東京・千代田)に対抗するように、LINEは中国ネット大手、騰訊(テンセント)とQRコード決済サービスで提携した。親会社の韓国NAVERの「Naver Pay」、東南アジアで展開する「LINE Pay」も日本で利用可能にし、インバウンド対応を強化して決戦に臨む。

テンセントとの提携を発表するLINEの会見。LINE Pay取締役COOの長福久弘氏(左)とウィーチャットペイ副社長海外事業開発統括のリ・フリードム氏(右)
テンセントとの提携を発表するLINEの会見。LINE Pay取締役COOの長福久弘氏(左)とウィーチャットペイ副社長海外事業開発統括のリ・フリードム氏(右)

 LINEはテンセントが運営する中国の2大スマートフォン決済アプリの1つ、「微信支付(ウィーチャットペイ)」を、2019年の早期に日本のLINE Pay導入店舗でも使えるようにする。

 LINE Payは18年6月以降、小売店に対しては導入コストや決済手数料の低減を、そして7800万を超えるLINEの国内ユーザーに対しては高いポイント還元策などを示して、QRコード決済サービスの普及を図ってきた。

 とりわけLINE Payが、普及を促進する武器として重視してきたのが、飲み会の席での割り勘などに利用できる“個人間送金”機能だ。コミュニケーションアプリであるLINEとの相性が極めて良いうえ、6月時点では、主要なQRコード決済サービスの中で同機能を備えるのはLINE Payのみで、ユーザーに対して強力にアピールできた。

 実際、個人間送金機能を使ったユーザーが、一定期間内に再び同機能を使うリピート率は、「LINEの他のサービスと比べても(再利用率は)極めて高い」(LINE Payの長福久弘取締役COO)といい、LINEの思惑は当たっていた。

 しかし、この状況を競合他社が指をくわえて見ているはずもない。ヤフーとソフトバンクの共同出資会社であるPayPayは、後発ということもあり、個人間送金機能を既に実装済み。楽天が展開する「楽天ペイ」も、19年中には同機能を実装する予定で、この領域でのLINE Payの優位が続くとは限らなくなっている。

訪日中国人観光客を店舗へ誘導

 そこでLINE Payは、まず小売店向けの普及策として2つの手を打った。1つは冒頭で示したテンセントとの提携。これにより、テンセントが運営するスマホ決済アプリのウィーチャットペイを、19年の早期に日本のLINE Pay導入店舗でも使えるようにする。

「LINE Pay Global Alliance」構想を掲げ、ウィーチャットペイなどアジアで利用されているQRコード決済を日本で利用できるようにして、No.1インバウンドペイメントを目指す
「LINE Pay Global Alliance」構想を掲げ、ウィーチャットペイなどアジアで利用されているQRコード決済を日本で利用できるようにして、No.1インバウンドペイメントを目指す

 日本では、アント・フィナンシャル・サービスグループが運営する、もう1つの中国のスマホ決済アプリ「支付宝(アリペイ)」が市場開拓で先行している。既に日本国内4万店以上に普及したうえ、PayPayの加盟店でも利用できる仕組みを整えた。今回の提携は、アリペイに比べて日本市場開拓が遅れ気味のテンセントと、加盟店開拓の武器を増やしたいLINE Payの思惑が合致した結果である。

 併せて、LINEの親会社で韓国最大の検索サイトを運営するNAVERが提供するQRコード決済サービス「Naver Pay」とも連携。19年中に、ウィーチャットペイと同じく日本でも使えるようにする。加えて、台湾、タイ、インドネシアの「LINE Pay」も、日本で利用できるようにする計画だ。LINEはタイでは月間アクティブユーザーを4400万人抱えるなど、一定のシェアを持つ。

 LINE Payを導入した小売店が、中国、韓国、台湾、東南アジアからの訪日観光客を無理なく呼び込める体制を整えたわけだ。

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