行き過ぎたデータサイエンスがインターネットの“セレンディピティー”(偶然の出会い)を奪っているのではないか……。さまざまな課題をはらむパーソナルデータの利活用の在り方について、一休社長が独自の見方を示す。
先日、米フェイスブックがデータを活用したターゲティング広告の在り方を見直す方針を明らかにしました。前回もデータ活用についてお話ししていますが、僕が常々感じるのは、少しデータサイエンスが活用され過ぎているなということです。
インターネットは国境がない自由な世界であるべきなのに、Facebookのタイムラインに出てくるのは、友だちが「いいね!」をした情報などに偏っている。これはニュースのキュレーションアプリなども同様です。
僕はサッカーのイングランド・プレミア・リーグが好きなんですが、だからといって、プレミアリーグのニュースばかり出過ぎです。僕のインターネット生活に“過剰なバイアス”が掛かっていると、率直にそう思います。
インターネットでは思わぬような情報や人との出会いがあってほしいし、そうあるべきだと思います。こうした出会いをセレンディピティーというんですが、データサイエンスがない時代のほうが、偶然の出会いがあった気がしています。
実際、サイトやアプリでニュースを見ていると、例えば中東の国でこんな事件が起きたという記事などが出てくるのですが、僕の場合は、英国でプレーしている何とかという選手が試合中にどうだったとか、そんなニュースのほうがたくさん出てくる。
これを見ると、「どうせ、あなたはプレミアリーグが好きなんでしょう」と言われているようで、少し違和感を感じます。
まあ僕自身、時には、そんなどうでもいいニュースをクリックしたりするんですがね(笑)。
データサイエンスはもっと有効な使い方ができるはずなのに、現状ではデータサイエンスが、世の中の人の生活クオリティーを下げる方向にも使われていませんかと。今のインターネットのそんな点がとても気になります。
ただ、こういう面でもアマゾンさんはすごく上手。検索する際の、イニシエートする「問いかけ」は、ユーザーが自分でする仕組みになっています。
例えば、今『ファクトフルネス』という本がとても売れています。この本を探すときには検索窓に「ファクトフルネス」などとタイプします。これって、「僕は今からファクトフルネス(とそれに関連する情報)を検索するんだ」と宣言しているわけですね。アマゾンに対して。
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