「渋谷 イタリアン おしゃれ」のような感覚的な言葉が入った検索結果をどう最適化するか。一休はAI(人工知能)の1分野である自然言語処理を活用し、精度向上を続けているという。

榊 淳(さかき・じゅん)氏
一休社長
1972年、熊本県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研修科終了後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。米スタンフォード大学大学院にてサイエンティフィック・コンピューティング修士課程修了。ボストン コンサルティング グループに入社し、約6年間コンサルタントとして活躍。2009年よりアリックスパートナーズ。13年一休入社。PL責任者として宿泊事業の再構築を担い、14年副社長COO就任。16年2月に創業社長・森正文氏の退任に伴い社長就任

 一休は高級ホテル・レストラン予約サービスを提供している、いわば「検索の会社」です。その生命線である検索効率を高める努力を常に続けています。

 例えば、同じキーワードで検索しても、検索した人によって異なる結果を返すようなパーソナライズされたサーチは従来から実施していて、さらに進化をさせています。

 今、取り組んでいるのは、「渋谷 イタリアン デート」のような言葉が入った検索への対応です。お店ごとにフラグが付いているので、「渋谷 イタリアン」といった検索なら簡単に適切な結果が出ます。

しかしそこに例えば、「デート」とか「おしゃれ」とか「大人っぽい」とか、あるいは「しっぽり飲める」といった抽象的、感覚的な言葉が加わると、検索が難しくなります。

 機械からすると「それは何?」みたいな。意味が分からないわけですよ、機械には。

 ではどうするか。

 ポイントになるのは、うちを利用いただいている会員の方が投稿しているクチコミです。膨大なクチコミテキストをまとめて、自然言語処理をすると、それぞれのレストランがどれくらいおしゃれ度があるとか、どれくらいデート度が高いかとか、どれくらいしっぽり飲めるかとか、そうした感覚的な言葉に関しても、その適合度合いをシステムが算出できるようになります。

 これは、「『この店をデートで利用しました』と書いてあるから、デートで行けるお店だ」といった判断をするものではありません。自然言語処理はもう少し賢い。例えば、「カップルで行くのにお勧めです」といった記述でも、これはデートという言葉と意味が近いというように認識できるのです。

簡単そうですが、これはディープラーニング技術などが進化した最近になって、ようやく実現できるようになったもの。意外と難しいんです。

 どこのサイトでも「渋谷 デート」などと検索すると、「え、これがデートで使う店なの?」というものも出てくる。うちもまだ完璧にできているとは言えない。今年の改革テーマの1つでもあります。

 今のところ、こうした検索をする人は、Googleを利用しているんだと思います。レストランを探している人で、こういう検索をしている人はいっぱいいる。それなのに一休でそういう検索をしている方はまだ多くない。僕たちの力不足だと思っています。

 ただ、うちはどういうお客さんがどういうレストランを実際に検索して予約して利用しているかというデータをたくさん持っている。グーグルはジェネラルな検索の会社ですが、うちはスペシャリティー検索の会社。レストランなどについては、Googleよりもデータが多いし詳しい。この利点を生かせば、お客様にとってより良い、より便利な検索サービスが提供できると考えています。

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