データサイエンティストであり、メガバンクや経営コンサルティングファームで経験を積んだ「プロ経営者」でもある一休の榊淳社長。入社半年の若手を支社長に抜擢するなど、独特な人事戦略の狙いを明かす。
一休社長
うちの会社で新しいビジネスを始める際、そのリーダーを会社が指名することは、あまりありません。
なぜかというと、前回紹介したように、ビジネスの責任者を社内で公募し、手を挙げた人に任せてしまう仕組みがあるからです。
うちはこのところ、横浜、名古屋、京都、福岡、沖縄に⽀社をつくってきました。「⼀休.com」「一休.comレストラン」で扱うホテルやレストランを開拓したり、関係を強化したりすることが大きな狙いです。
そして新しい支社の支社長は、いずれも公募に手を挙げた人が、そのまま就任しています。
支社長といえば、当社においても、それなりのポジションですが、年齢や経験は問いません。例えば横浜支社長に立候補したのは、入社して半年くらいの若手社員でした。
日本の普通の会社ならあまりないことかもしれませんが、僕は、やる気がある人が自らの意思で手を挙げることに意義があると考えます。そして、そのほうがよい結果につながると思うからです。
リーダーに選ばれた人間が、誰を部下として連れていくかも、本人に決めてもらっています。
横浜支社長になった社員も、「あのアシスタントを連れていきます」なんて報告に来ました。僕からは、「いいよ、頑張れ」とだけ言って送り出しましたが、今では立派に支社長を務めています。
横浜というマーケットにおいて彼は、一休の全てを代表する責任者になったわけです。最大のミッションはうちが扱う高級レストランのオンライン予約を推進、拡大すること。うちは高級レストランの予約市場でシェアが一番ですから、横浜でもたぶん同じ。うちのビジネスだけでなく、取引先である横浜のレストラン業界の今後を左右するかもしれない立場になったわけで、その責任は重大です。
それだけに就任当初は大変だったと思います。でも、先日久しぶりに会社で会ったら、実にいい顔をしていました。自分の責任で市場を開拓する手ごたえを感じていたんでしょう。
リーダー選びに限らず、人事異動なども、希望する異動先の長がオーケーと言えば、できるだけ叶えるようにしています。
そもそもうちの場合、「人事異動は年に1回」などと決まっているわけではない。以前からフレキシブルにやってきた土壌があるのです。
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